研究領域 | 3D活性サイト科学 |
研究課題/領域番号 |
15H01052
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
中田 彩子 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 ナノセオリー分野 量子物性シミュレーショングループ, 主任研究員 (20595152)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大規模計算 / 触媒 / ナノ粒子 / 物性物理 / 理論化学 |
研究実績の概要 |
本研究では、我々が開発している大規模第一原理DFT計算プログラムCONQUESTを用いて、担体表面上の触媒ナノ粒子を実際の状態に近い形で表現した大規模モデルに基づくDFT計算を行うことにより、吸着状態における構造決定や局所的な安定性、電子状態の解析することを目指す。具体的には、高効率・安全・低環境負荷な触媒として近年注目を集めている金ナノ粒子触媒を対象とする。 当該年度では、孤立金ナノ粒子の構造・電子状態の解析および触媒反応解析のための手法開発を行った。まず、高活性が確認されている~3nmまでの金ナノ粒子に関して、対称性の高い構造(Ih, Dh, fcc)における安定構造探索を行った。その結果、サイズが小さいときにはfcc構造が安定だが、1 nmを超えたあたりからIh構造が安定化することが確認された。さらに、本新学術領域試料班の満留助教(阪大)らにより金ナノ粒子触媒反応を大きく活性化することが示された酸素環境分子の影響を解析した。金ナノ粒子に酸素分子を吸着させた場合の安定構造、電子状態を解析したところ、金から酸素分子への弱い電子移動が起きていることが予備計算により示されている。 また、我々が開発してきたマルチサイト法の改良に取り組んだ。この手法では、局所的な分子軌道様の関数を用いて波動関数を表現することで、精度を保ちながら計算コストを大幅に減らすことができる。本研究では、マルチサイト関数の作成に数値的最適化を導入することで、変分的に安定した計算を可能とした。これにより大規模金属系の構造最適化や第一原理分子動力学計算が可能となり、本研究で目指す担体上金属ナノ粒子の反応解析を実現することが可能となった。 さらに、本領域理論班の森川教授(阪大)と連携し、反応エネルギー解析のためのBlue-moonアンサンブル法のCONQUESTへの導入、およびマルチサイト法との連結に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、本年度では孤立ナノ粒子の安定構造、および粒子内の構造・電子状態のサイト依存性の解析を行うことができた。当初の予定では続いて金ナノ粒子と担体との相互作用を解析する予定だったが、共同研究者である本領域試料班の満留らにより、酸素環境分子が金ナノ粒子触媒反応を大きく活性化するという重要な結果が示されたため、酸素環境分子の影響を先に調べることにした。本年度に行った予備計算により酸素分子の吸着による電子状態の変化などが示されており、今後より信頼性の高い計算方法を用いて詳細な検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、担体や周辺環境分子などの反応場がナノ粒子に与える影響を構造・電子状態双方に関して調べる。その上で、反応場を含むナノ粒子モデルに反応分子を吸着させ、Auナノ粒子を用いた化学反応の活性サイトに関する検討を行う。 まず、本年度に得られた孤立Auナノ粒子の安定構造を基に、Auナノ粒子触媒反応における雰囲気の影響を大規模第一原理計算により検討する。シラン化合物の酸化反応に関して、周辺酸素雰囲気が反応を大きく活性化することが実験的に報告されている。本研究では触媒周囲の酸素分子を直接取り込んだ第一原理計算により、酸素分子吸着のサイト依存性を調べる。 また、実験研究との協力のもと、最適化されたAuナノ粒子を担体である酸化物表面に乗せたモデルにおける構造最適化計算を行う。得られた構造において、局在軌道を用いて各原子のエネルギーや電子分布、軌道エネルギーの解析を行い、ナノ触媒を構成する多数の原子から特異な電子状態を持つ原子を探索し、反応の活性箇所の候補を見つけることを目指す。当該領域で行われる3D構造測定などの実験との協力のもと、接合界面近傍の構造決定に取り組む。 上記の研究が順調に進んだ場合にはさらに、そこから得られた活性サイトの候補箇所に実際に反応分子を吸着させた場合の反応エネルギー計算を試みる。そのために、昨年度にCONQUESTに導入した第一原理MD計算に基づくブルームーン法による反応エネルギー計算を行う。ブルームーン法では、反応座標を指定したうえでの反応エネルギー計算が可能である。そこで、活性サイトの候補箇所に反応物(シラン、アルコールなど)を吸着させた状態でのブルームーン計算を行い、シラン酸化反応の反応エネルギーのサイト依存性を検討したい。
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