ワイドギャップ材料は、エネルギー変換・制御効率が高いパワーデバイス材料として期待されており、ダイヤモンドはその物性値から特に高いデバイス特性の実現が期待されているが、実証された動作特性は実用化には程遠い。過去の文献や自身のデバイス特性評価実験の結果から、現在のキャリアドーピング技術が未熟で、ボロンのほとんどがキャリアとして機能していない問題に直面し、この問題を解決すべくドーピングによるデバイス機能発現機構の解明という課題発案に至った。申請者は過去に、光電子立体写真法で高濃度ボロンドープダイヤモンドのドーパントサイト解析に取り組み、ドーパントサイトの結晶成長方向依存性を解明した経験がある。この経験をもとに、デバイス中のダイヤモンドのドーパントサイトを明らかにし、電気特性との相関があるドーパント状態(活性サイト)の特定することで、活性化ボロンの正体、すなわちドーピングによる機能発現機構を解明したいと考えた。 光電子ホログラフィー法を用いて、ボロンドープダイヤモンドの活性サイト解析実験を行った。試料は産総研内で作製した高濃度ボロンドープダイヤモンドで、ボロン濃度は3×10^20/cm3である。光電子ホログラフ実験はSPring-8のBL07LSUで実施した。 カーボン1s軌道から光電子で得られた光電子ホログラフィと理論計算結果を比較したところ、評価試料はダイヤモンド構造を保持していることを見出した。normal方向に出射した光電子のボロン1sピークが2つに割れていた。このデータはボロンのドーパントサイトが2つあることを示唆するものである。
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