人工の脂質膜であるNanodiscを用いたRibosome Displayの確立に取り組んだ。ribosomeから提示されたペプチド鎖が、脂質との親和性によって選抜されることを示すために、7回膜貫通型タンパク質bacteriorhodopsin(bR)と、FtsZ interacting protein A(ZipA)の一回膜貫通ドメインを膜タンパク質のモデル分子として使用した。可溶性のタンパク質(DHFR)と、各モデル分子を系中に共存させたときに、サイクル数の増加に伴ってモデル分子の遺伝子が濃縮されることが示された。このことにより膜タンパク質のibosome Displayによる選抜が可能であり、また脂質としてNanodiscを用いることが有効であることが示されたため、この手法を用いて、ランダムな10アミノ酸のペプチドをコードするDNAライブラリーを構築した後、PURE systemで翻訳し、Nanodiscとの親和性を有する翻訳複合体の選抜を行った。1サイクル後のmRNAの配列解析の結果、コドンの出現確率に対するアミノ酸の出現頻度において、イソロイシンの相対頻度が顕著に上昇し、グリシンの相対頻度が顕著に減少した。このサイクルを繰り返すことによって、原始膜タンパク質の配列に迫ることができるものと期待できる。 大腸菌の細胞分裂の根幹を担う3つのタンパク質を、人工膜小胞中でPURE systemを用いてde novoに合成することに成功した。FtsZは、脂質膜にアンカリングされたZipAと結合、重合し、脂質膜の変形を惹起した。このリポソームは分裂する人工細胞の開発につながるものと期待できる。
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