現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
β-sheet構造を持つタンパク質としては114からなるキュピンタンパク質を選び、様々な金属イオンが結合できることを証明した。特に、第三周期の遷移金属(V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Zn)だけでなく第四、五周期の重い遷移金属(Ru, Rh, Pd, Os, Ir, Pt)が結合し、タンパク質骨格を安定化することをしめした。また、それらの結晶構造を決定したところ、明確にアミノ酸残基に配位子非特異的な吸着ではないことが明らかとなり、冥王代における原始金属酵素の可能性を示した。 一方で、アミロイドタンパク質などに見られるコア配列(LVFFA)の末端にAsp, Glu, Hisなどを結合した6-9残基のペプチドを用いるとアミロイド形成が見られた。さらにこのアミロイド形成は二価の銅イオン添加により、促進され、かつESRスペクトルにより、主に特定部位に結合していることが明らかとなった。さらにマイケル付加反応等のC-C結合形成反応を加速することが明らかとなり、年度計画としては良好な進捗を示した。
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今後の研究の推進方策 |
このように、本年度達成された結果をもとに次年度はさらに計画を進展させる。不溶性のオリゴペプチドの凝集体と可溶性の短いペプチドおよびβ-sheetタンパク質それぞれに対してさらに広範囲に検索を行う。それぞれの金属錯体のCO2, HCOOHの還元反応、CO2の水和反応やH2Oの光酸化反応など小分子の活性化反応にも挑戦し、立体選択性を比較しながら最小単位の古代金属酵素復元を目指す。鋳型効果(配列の再現性)を比較し、自己複製能の可否を判別する。これらに加えて、乳酸やアラニン(Ala)を例に取り、エステルおよびアミド結合形成能における立体選択性と鋳型効果に焦点を当て、ポリマー合成反応を検討する。ペプチド合成に用いるアミノ酸についてD体とL体の両者から合成したペプチドを用いて、その立体選択性の発現機構にアプローチする。さらにペプチド配列に含まれるアミノ酸(Gly, Ala, Asp, Val)を混合し、合成を行って配列の再現性を確認する。
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