公募研究
本研究は原始地球における生命誕生時期が天体衝突が頻発していた「天体重爆撃期」に重なっていることに着目した. 研究目的は天体衝突が生命誕生場に与える擾乱を定量的に明らかにすることである. 単発の天体衝突で引き起こされる物理化学過程を検討し, 初期数億年間に地球質量のおよそ1%におよぶ天体群が金星・地球・火星に衝突した場合に何が起こるか?を明らかにするために研究を遂行した. 得られた主要な成果を以下に述べる. (1)数値衝突計算コードであるiSALE shock physics codeを計算出力を後処理し, 衝突後の衝突天体が辿る熱力学経路を計算する後解析コードを作成した. マルチコア計算機を導入し, 数値衝突計算と後述の100万回に及ぶ天体衝突を扱う確率論的重爆撃モデル計算を幅広いパラメータ空間を効率よく埋めるための計算環境を構築した. (2)天体衝突時に衝突天体が蒸発することで発生する気相化学種を衝突速度の関数として明らかにした. 特に酸素分子の生成効率が衝突速度に強く依存していることから, 天体衝突による非生物的酸素生成が生命誕生場への新たな自由エネルギー源となり得ることを提唱した. また原始地球や火星に過渡的に酸素を含んだ大気が発生した場合に特殊な地質試料が残される可能性があることから仮説の実証に向けた新たな研究を開始した. (3)天体重爆撃期に頻発した天体衝突の重畳された情報を紐解くため, モンテカルロ法を用いた確率論的重爆撃モデルを構築した. (4)確率論的重爆撃モデルを用いて原始金星の表層変動を解いた. 天体衝突によって発生する大量の細粒岩石と高温の初期金星大気の間の化学反応を検討し, 天体重爆撃が初期金星を極度に乾燥した状態に導いたとする新説を提唱した. 本モデルは火星の大気進化を扱う計算にも流用され, 初期火星の大気全圧下限を制約するという成果を挙げている.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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