本研究では以下を実施した.A:化学進化において重要な粘土鉱物などの影響を400℃までの高温下で解析できる新型リアクターを確立する.B:本装置を用いて原始リボザイムモデル(アボカドウイロイド中のハンマーヘッドリボザイム)の機能およびそれに対する鉱物の影響の効果100℃以上の高温下で解析する.C:原始タンパク質モデルを酵素速度解析しするとともに,原始生体高分子が生化学機能を発現し得た温度・圧力・pH・鉱物種を明らかにする.本年度は前年度の成果を踏まえフローリアクターを完成し,リボザイムの機能を高温下かつ鉱物共存下で解析する. 本装置を用いてジペプチドおよびトリペプチドの環化反応に対する粘土鉱物の影響を調べた.これにより,本装置が冥王代環境のシミュレーションを行うのに十分な性能を持つことを確認した.また,150~200℃でのジペプチドとトリペプチドに対する粘土鉱物の効果を調べ生成物を分析し,現在解析中である.一方,研究協力者(M.-C. Maurel教授・パリ第6大学)からリボザイムの調製法を習得し,研究協力者ら(小川麻里および小長谷紀子・安田女子大学)とリボザイムの調製を行った.このリボザイムを用いて常温で反応を行った結果,自己解裂反応が進行することを確認した.また,これらの研究過程で従来のフローリアクターは高温には十分に対応できたが,高圧条件を十分にカバーできないという課題を見いだした.また,リボザイムにおいては高圧下では自己解裂反応は遅くなる.そこで,従来よりも超高圧下での反応解析を可能にする超高圧型の熱水フローリアクターへの改良を試み,おおむね成功し,このリボザイムの高温高圧下での自己解裂反応に適用し検討中である.
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