本研究では、Thermus thermophilusリボソーム30Sサブユニットの主構成成分である16S rRNAを、異種微生物由来のものと置換した変異株を創成することを目的とした。また翻訳装置の改変がどのように表現型に影響するかを観察した。 まず、T. thermophilus HB27株のゲノムに含まれる16S rRNA遺伝子2コピーのうちTTC3024を破壊したDB1株を作成した。次に、Thermus属細菌10株、Meiothermus ruber 2株、Deinococcus radiodurans 2株ゲノムより16S rRNA遺伝子をPCR増幅した。これらの機能を評価するために、DB1株を上記実験で増幅した16S rRNA遺伝子により形質転換(相同組換え)した。その結果、16S rRNA遺伝子全長が置き換えられた形質転換体や、内部で組換わった結果生じたキメラ体など、種々の16S rRNAを含む変異株が得られた。とくにThermus属の16S rRNA遺伝子では全てにおいて全長置換体が得られたが、MeiothermusやDeinococcusにおいては、組換え点の異なる種々のキメラ体が得られた。また、T. thermophilus HB27には複数のゲノムが存在することが知られているが、変異株においては、16S rRNA遺伝子の異なるゲノムが混在する状態が過渡的に生じ、変異株の培養を続けるとゲノムが均一化することも判明した。変異株の表現型の特徴として、MeiothermusやDeinococcus由来16S rRNAを含む変異体は総じて温度感受性を示すことがわかった。これは、16S rRNAの耐熱性低下に起因するリボソームの耐熱性低下が主要因であると考えられた。
|