研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の多元化と高度知能化診断・治療への展開 |
研究課題/領域番号 |
15H01103
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大城 幸雄 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10535008)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膵臓手術 / シミュレーション / CT / MRI / 融合 / 多元 / 変形 |
研究実績の概要 |
わが国は世界でも安全に膵臓切除が可能な国のひとつであるが,手術死亡率が数%ありゼロに近づける為の創意工夫が必要である。また、現在、わが国の外科医は減少を続けており10 年後に1/3 になると予測される。長期のOJT 期間が外科を敬遠する原因であり医療崩壊を救うためOJT 期間を大幅に短縮可能な実効性のある教育システムが必要である。本研究は、手術に適応した計算解剖モデルと臨床応用,医学教育用システムとして,CT とMRI を融合させる多元型変形可能な膵臓手術シミュレーションソフトの開発研究を行い多元計算解剖学の創成と治療支援の高度化に貢献するものである。今年度に実施した研究開発は、以下のようである。i) 多元型膵臓変形データに対する多様なバーチャル切除の設計、実装、ii) バーチャル切除における切離面と臨床における切離面、膵管・血管位置の形状比較、iii) 膵臓変形時の血管の走行位置補正のための物理特性値調整
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
i) 多元型膵臓変形データに対する多様なバーチャル切除の設計,実装:CT とMRI データより多元融合型3D 化した膵臓を変形可能なシステムにてバーチャル膵臓切除システムを構築.異なるモダリティであるCT とMRI を非剛体位置合わせにより多元融合させ、胆管を含む膵臓の3D モデルを構築した。 ii) バーチャル切除における切離面と臨床における切離面,膵管・血管位置の形状比較:バーチャルの結果と実際の手術結果を比較し血管の走行位置が許容範囲内であることを検証した。 iii) 膵臓変形時の血管の走行位置補正のための物理特性値調整:ii) の膵臓変形時の血管の走行位置検証で派生した問題点につき,膵臓,膵管・血管の走行位置の調整をシステム情報系の専門家と行い実用性を向上させた。
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今後の研究の推進方策 |
次世代3D-CGバーチャル膵臓切除システム(Pancsim)の開発 i) CT-MRIフュージョンの高精度化 : CT画像上で胆管の同定が困難な場合においても、高精度でMRI画像を融合可能な非剛体位置合わせアルゴリズムを開発する.ii) 多元型膵臓変形3Dモデルの構築システムの開発 : 膵臓領域自動抽出アルゴリズムおよび対話型血管構造抽出アルゴリズムを統合した,膵臓およびその周辺構造(胆管,動脈,静脈)の3Dモデル構築システムを開発する. 次世代3D-CGバーチャル膵臓切除システム(Pancsim)の有用性評価 iii) Pancsimの有用性の評価(腹腔鏡下胃切除術): 腹腔鏡手術において視野展開は極めて重要である。胃癌手術でのD2郭清のためには、膵を損傷することなく膵周囲のリンパ節郭清を行う。膵周囲のリンパ節郭清では、膵を効果的に偏位、変形させ、膵上縁あるいは背側の視野を確保する必要がある。しかし、術中の郭清のために必要な膵変形、偏位の程度は、患者ごとに大きな個体差があり、その難易度も主要血管や膵実質の相対的位置関係など個別の解剖学的特徴により規定される。そこで、われわれは、Pancsimを用いて患者個別の解剖学的特徴ごとに膵変形,偏位をシミュレーションし,腹腔鏡下での胃癌手術の術野展開における有用性を評価する.iv) 腹腔鏡下胆嚢摘出術でのPancsimの有用性の評価 : Augmented Reality (AR)を取り入れた評価を行う.具体的には,手術室の術野ディスプレイにPancsimによるシミュレーション画像を重畳表示する(ARディスプレイ)。そこに通常の実際の術野ディスプレイを並べる。ARディプレイでは、胆嚢は手術の動きと同様に変形が可能であるため、術中ガイドとして使用可能である。その手術での有用性や若手外科医の教育的効果を評価する。
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