研究実績の概要 |
特発性間質性肺炎とは、胸部X線CT画像上、両肺にびまん性陰影を認め、主に肺胞隔壁(間質)を病変の場とする原因不明の疾患の総称である。従来の間質性肺炎の画像診断は、軸位断CT画像の放射線科医による視覚的評価が主体であり、軸位断像のため頭尾方向への病変の広がりが認識しにくく、主観的評価のため読影者間の不一致率が高いことが問題であった。 研究代表者は間質性肺炎病変が胸壁直下に好発する点に着目し、胸部3次元CT(3D-CT)画像データから、胸壁より一定の深さ(1cm, 2cm, ...)で胸壁に並行な曲面のcurved MPR像を再構成すれば、全肺の間質性肺炎病変を1画像で表示することが可能になると考え、3D-curved high-resoution CT; 3D-cHRCTを開発した。3D-cHRCTにより間質性肺炎の3次元的な分布を観察・診断することが可能となった。さらに前年度には3D-cHRCTによる間質性肺炎の定量評価が可能であることを明らかにした。 本年度はこの3D-cHRCTを用いた間質性肺疾患の経過観察の可能性を検討した。結果として、3D-cHRCTから計算される定量値は、間質性肺疾患の放射線科医の画像診断的病勢評価および呼吸機能検査に基づく臨床的病勢評価と有意に相関していることが示された。このことは3D-cHRCTが、間質性肺疾患の新たな経過観察の指標になり得ることを示している。本研究成果については北米放射線学会(RSNA2016)において口演発表を行った。
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