コイルを用いた脳への非侵襲脳刺激の施術では、刺激装置であるコイルを頭部表面と並行になるよう配置し、かつ脳溝などの形状を考慮し、その角度も選択する。頭部と刺激装置の典型的な位置関係を基準とし、脳内で誘導される電流を解析する必要がある。従来の施術では、この基準位置決め作業にすら時間が取られるため、また、脳科学を目的とした例が多く、基準の刺激位置以外の報告例がほとんどなかった。従って、脳外科手術における術前検査など、実測を見据えた刺激支援システムを開発する必要がある。 本研究では、新学術の枠組みで提供された、ランダムな位置角度で複数回(3-10回程度)の刺激を実施した場合の運動誘発電位(MEP)データを提供をいただき、刺激されたであろう部位特定の高精度化を実現した。具体的には、脳の標的部位をおおよそ1cm2で推定することが可能となった。また、解析結果を、脳表上のプロットすることによる可視化技術を開発した。さらに、頭部に対して任意相対位置に刺激装置を置く状況を可視化できるシステムを開発、医師など非専門家でも高速に最適化が可視化されるシステムを開発した。脳外科手術時の刺激位置、閾値との比較を行うことにより、有効性を検証することに成功した。 本システムについて、平成27年度に引き続き、多様なコイルを用いることによる特性改善の可能性を検討した。その結果、最も有効であるのは、コイルの半径が小さい場合であることが示唆された。
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