研究領域 | 医用画像に基づく計算解剖学の多元化と高度知能化診断・治療への展開 |
研究課題/領域番号 |
15H01118
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中山 良平 立命館大学, 理工学部, 准教授 (20402688)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 知能化診断システム / 乳房MRI / 代謝・生理機能 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,複数のシークエンスで撮影された乳房MRI画像(T2強調画像,ダイナミックMRI画像,拡散強調画像)から病変の形態,代謝・生理機能を統合的に解析することにより,病変の病理組織型の可能性を提示する高度知能化診断システムを構築し,その有用性を臨床評価試験で検証することである. 本年度は,まず,ダイナミックMRI画像上の病変形態(形状,辺縁,造影効果の不均一性,分布の対称性など)をコンピュータにより形態的特徴量として定量化する手法を確立した.また,ダイナミックMRI画像から濃染パターンに基づいて代謝・生理機能を定量化する手法も確立した.そして,これらの特徴量から腫瘤病変の良悪性に有用な特徴量を選択し,それらの特徴量を解析することにより,良悪性の可能性を評価する高度知能化診断システムを開発した.Leave-one-out testing methodによる分類の結果,87.1%の感度と82.1%の特異度が得られた. また,腫瘤病変の良悪性鑑別診断における高度知能化診断支援システムの有用性を観察者実験で評価した.Receiver Operating Characteristic解析の結果,ROC曲線下の面積は,高度知能化診断支援システムを使用した場合0.755,使用しなかった場合0.618が得られ,高度知能化診断支援システムを使用することにより医師の診断能が有意に向上する結果が得られた(P = .017).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の計画していた特徴量抽出法の確立では,●T2強調画像,ダイナミックMRI画像から,診断医が実際のMRI診断で着目している病変形態(形状,辺縁,分布など)を形態的特徴量として定量化,●ダイナミックMRI画像,拡散強調画像から濃染パターンとADC(Apparent Diffusion Coefficient)値に基づいて,代謝・生理機能を代謝・生理機能特徴量として定量化,の2項目を予定していた.しかし,申請時の予想よりも複数シーケンスのMRI画像の収集に時間を要したため,ダイナミックMRI画像のみを対象とした特徴量抽出法の開発に従事した.したがって,「当初の予定よりもやや遅れている」状況である.現在,他のシーケンス画像も入手出来ており,ダイナミックMRI画像における特徴量の抽出法を展開することで,他シーケンス画像の特徴量抽出法の確立は比較的容易であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
複数シーケンス画像において,病理組織型における病変の生い立ちや性状の違いと形態的特徴量,代謝・生理機能特徴量との関係を明らかにし,診断医が経験的に理解している各病理組織型の病変の性状と形態的特徴量,代謝・生理機能特徴量が一致するかを確認する.そして,様々な形態的特徴量,代謝・生理機能特徴量と識別器(線形判別分析,ベイズ識別関数,ニューラルネットワークやサポートベクターマシンなど)を組み合わせることにより,病理組織型の可能性を評価するアルゴリズムを構築する.ここでは,現在のダイナミックMRI画像から得られた特徴量のみを用いた場合より,正確に識別できることを明らかにする.臨床評価試験により,病理組織型の可能性,類似症例を診断医に提供する高度知能化診断システムの有用性を検証する.ここでは,「診断医の画像診断の正確度の向上」,「読影時間の短縮」,「医療費の削減」などの観点から有用性を多面的に明らかにする.
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