研究実績の概要 |
ヒト気管支の3次元的な発生の法則性を知るために本研究を行った。 【方法】京都大学大学院医学研究科附属先天異常標本解析センター所有のCS13ーCS22の正常ヒト胚子から得られた立体情報計36個体を対象とし、1) 位相CT画像とEFICの画像情報をもとに気管支の立体像を作成しCSごとのヒト気管支の形成過程を観察した。気管支樹を作成し2) Metzgerらが提唱したマウス気管支のDB, PB, PBの3分岐パターンに基づいた定性的検討、3) 気管支単位の角度計測をもとに数理的な検討を行った。 【結果】1)形成過程の観察:CS13で左右の一次気管支芽が形成され、CS16で二次気管支芽が形成された。CS20ですべての区域気管支が観察された。一次気管支芽はCS13-CS16までは気管に対して背側方向に伸長し、CS17以降では腹側に伸長した。CSが進むにつれて気管支樹の最大分岐数が増加し、CS22で最大15分岐の気管支が観察された。各葉別の最大分岐数は、葉気管支を基準(第一分岐)とすると、多い順に右下葉、左下葉、左上葉、右上葉、右中葉だった。2)マウス気管支分岐パターンに基づいたヒト気管支の定性的解析:k番目の分岐がDBの場合、k+1番目の分岐はDB、PB、OBのいずれも観察されたが、分岐パターンがPB、OBである分岐は最も末梢の分岐のみに観察された。OBの分岐において回転角が約90°の分岐と約45°の分岐が見られ、約90°の回転角の分岐の方が多いものの、約45°の回転角の分岐も一定数見られた。 3)気管支の数理的解析:対称性パターンは主に末梢側で見られ、非対称性パターンは中枢側と末梢側のどちらにも見られ、明瞭な分布の差はなかった。 【結論】ヒト胚子期のCSごとの気管支の発生過程を形態学的、定性的、定量的に明らかにした。気管支の正常発生を知ることで異常個体の解析に応用できる可能性がある。
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