公募研究
新生児の約10%が低出生体重児として出生し,幼児期の発達障害発症との強い相関が示唆されている.発達障害は,より早期,さらには発症前からの療育が予後改善に有効ではあるが,発症予測法が不明であるため,発達障害前の療育開始は行えない.我々は,ハイリスク児を対象に新生児期の脳形状およびその発達に伴う形状変化から,発症を予測する研究を進めている.そこで,正常な脳形状,正常な脳形状の時間変化のモデル化を行い,同モデルを用いた発症予測を行った.今年度の研究実績を以下に示す.実績1) weighted PCA(重み付き主成分分析)を用いた時空間統計的形状モデル構築法を提案した.同手法は測定時点が異なる複数学習用被験者脳形状に対して,時間軸に沿った重みパラメータを定義し,各時点において統計的形状モデルを構築する.同手法を2次元脳形状に対してlevelset法を用いて適用し,0歳から2歳の期間における新生児脳形状変形をモデル化した.実績2) 脳表面形状での個人間変動をモデル化するため,脳形状表面点の個人間対応付け法として,脳表面の脳回,脳溝の形状を特徴抽出したSDI(sulcal distribution index)係数を提案し,球への写像空間中の非線形変形法を提案した.実績3) 新生児は特に成長の違いが大きく,同じ年齢(月齢)においても,その実質な成長度は大きく異なる.そこで,多様体学習を用いた脳発達度推定法を提案した.同手法を用いることで,各個人の脳発達度を推定可能となり,さらに実年齢との違いから,脳発達疾患との関連性が見いだせるのではないかと考えている.
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の主目的である新しい時空間統計的形状モデル構築法を提案し,すでに実データへの適用も行えている.さらには同モデルを用いた,個人の脳成長度合いの定量化法も提案を行えているため,主要な問題はほぼ解決できたと考えている.
今後は以下の3項目で研究を推進する.研究項目1 【解析パラメータの最適化】 提案した時空間統計的形状モデル構築法においては,時間軸に沿った重みパラメータを定義している.現在は同パラメータは任意に設定している.そこで,同パラメータ関数の最適化,モデル化を行う学習データ空間内の特徴に沿った関数形状の最適化,データ密度に応じた局所パラメータ関数などを検討し,時空間統計的形状モデルの高質化を行う.研究項目2 【時空間統計的形状モデルの改良】 提案した時空間統計的形状モデルでは,成長,老化,疾患進行度などの各時点での個人間変動を統計的にモデル化している.これを,空間と時間を入れ替え,時間軸に対する個人間変動を統計的にモデル化する解析手法を検討する.研究項目3 【他特徴量に対する時空間統計的形状モデルの適用】 提案した時空間統計的形状モデルでは,脳表からの符号付距離値を用いて時空間統計的形状モデルを構築した.脳表での個人間の解剖学的位置合わせが行えているため,別特徴量として同特徴点の3次元位置座標を用いた時空間統計的形状モデルを構築する.
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Fuzzy Systems (FUZZ-IEEE), 2015 IEEE International Conference on
巻: 1 ページ: 1-7
10.1109/FUZZ-IEEE.2015.7337920
Informatics, Electronics & Vision (ICIEV), 2015 International Conference on
巻: 1 ページ: 1-5
10.1109/ICIEV.2015.7334065
Systems, Man, and Cybernetics (SMC), 2015 IEEE International Conference on
巻: 1 ページ: 2273 - 2276
10.1109/SMC.2015.397
https://sites.google.com/site/syojikobashi