研究領域 | 地殻ダイナミクス ー東北沖地震後の内陸変動の統一的理解ー |
研究課題/領域番号 |
15H01146
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
西尾 嘉朗 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (70373462)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地殻流体 / 泥火山 / 地球化学 / 同位体 / リチウム / 地殻変動 / 海底 |
研究実績の概要 |
沈み込むスラブからの脱水流体は,海溝型巨大地震発生に大きく関わる。応募者が研究代表者として受けた新学術領域「地殻流体」公募研究(平成22-23年度)では,南海トラフの熊野前弧海盆(紀伊半島沖)の泥火山流体に350℃以上を経験した高温流体が含まれることを,リチウム(Li)の同位体指標を用いて明らかにした。南海トラフ前弧域の海底泥火山は熊野沖,足摺沖,種子島沖の3地点のみと局在していることから,『前弧泥火山は,沈み込むプレートからの脱水流体の水みちの指標』であるという仮説を応募者は導き出した。しかし,熊野沖や足摺沖の泥火山の高温流体の熱源は周辺の火成岩体であることも否定できない。そこで本研究課題では,周辺に火成岩体が存在しない種子島沖の泥火山を中心に,南海トラフ海溝沿いにおける深部流体上昇域の分布を明らかにする。本年度は種子島沖の海底泥火山と西南日本前弧部の湧水試料を集めた。本研究代表者は本年度6月より海洋研究開発機構から高知大学に移ったため,本研究で分析対象であるリチウムをはじめとする元素の同位体分析システムを高知大学実験室にて構築作業を行った。一方,研究代表者が高知に異動になったことで,四国前弧部の湧水試料にアクセスしやすくなった。そこで,断層や地質境界付近の湧水を中心に陸上湧水を採取した。平成28年度はこれまで回収された水試料の分析・解析を中心に本研究を進めるが,2016年4月に九州の中央構造線で発生した巨大地震による西南日本の前弧部の『水みち』への影響を明らかにすることも併せて試みたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題応募時には,同位体分析は研究代表者が所属していた海洋研究開発機構で実施する予定であったが,2015年6月より高知大学に異動となったことに伴って,高知大学の実験室(クリーンルーム)にて分析システム構築を実施した。本研究課題応募時から,休止していたリチウム同位体分析システムの再構築を予定していため,代表者の高知大学への異動にかかる研究課題計画への大きな影響はなかった。しかし,海洋研究開発機構として購入していた化学分析用の機材や消耗品の多くが利用できなくなったため,当初予定以上の物品費が必用となった。そこで,分析補助を雇用する経費として予定していた人件費・謝金を削減して,実験室立ち上げ経費(物品費)として用いた。当初予定していた分析補助については,学生の貢献で当面は対応する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の航海にて回収された種子島沖の海底泥火山の間隙水試料の同位体分析を実施する。得られたデータを,これまでに研究代表者によって分析された熊野沖の海底泥火山の間隙水試料のデータと比較する。併せて,西南日本前弧域での『水みちモデル』の検証のために,平成28年度にも湧水試料採取を行って,分析データを増やす予定である。また,2016年4月に九州の中央構造線で発生した巨大地震による西南日本の前弧部の『水みち』にも大きな影響を与えた可能性を探ることも併せて実施する。
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備考 |
特に高知大学農林海洋科学部海洋資源科学科・海底資源環境学コースFacebook(https://www.facebook.com/kaiteishigen)は,研究代表者が管理運営しており,適宜に本研究課題の成果や進展を紹介している。
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