公募研究
胸腺でT細胞の自己免疫寛容誘導に必須な髄質上皮細胞は、胸腺皮質の上皮細胞と共通する前駆・幹細胞から分化する。その分化過程で髄質上皮細胞は、組織特異的抗原の異所的な発現、転写因子AIREの発現、共刺激因子CD80/86の高発現など、他の上皮細胞には見られない特性を獲得する。これらの特性は自己免疫寛容の誘導に重要であるが、共通前駆・幹細胞からの分化過程において、どのような分子機構で成立するのか、未だ理解は不十分である。本年度は、髄質上皮細胞の分化に必須なTNFレセプターファミリーRANKの発現を指標にして髄質上皮細胞の前駆細胞の同定を目指した。その結果、RANKを発現するが、成熟した髄質上皮細胞特異的な因子を発現しない前駆細胞候補を得た。前駆細胞候補を単離し、遺伝子発現を調べたところ、Aireや組織特異的遺伝子をほとんど発現していなかった。またAire遺伝子の DNAメチル化を調べたところ、成熟した髄質上皮細胞ではメチル化されていないCpG配列がメチル化されていなかった。ついでマウス胎仔胸腺の再構成実験を行ったところ、Aireや共刺激因子を高く発言する成熟した胸腺髄質上皮細胞へ分化した。また髄質上皮細胞の機能不全により自己免疫疾患を発症するaly/alyマウス由来の胎仔胸腺に、前駆細胞候補を導入し、ヌードマウスに移植したところ、aly/aly 胎仔胸腺移植で発症する自己免疫疾患は、前駆細胞の導入により抑制された。以上のことから、当該細胞は、髄質上皮前駆細胞であると結論した。以上により、今回同定したAire陽性髄質上皮細胞に分化できる細胞は、Aire機能不全によるヒト自己免疫疾患の発症抑制に応用できると期待される。
2: おおむね順調に進展している
今年度の到達目標であった、胸腺髄質上皮前駆細胞の候補を得た。さらに、それが髄質上皮前駆細胞であることを多方面から実証できたため。
今後は、髄質上皮前駆細胞の遺伝子発現をマイクロアレイ法などにより網羅的に解析する。さらに髄質上皮前駆細胞の分化を制御するシグナル因子の同定を行う予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
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