公募研究
ヒトの先天性免疫不全症のひとつである脾臓形成不全に関連する転写因子Tlx1に焦点をあてて、脾臓の器官形成について解析を行った。まず、Tlx1欠損マウス胎仔では脾臓は形成されず、本来なら脾臓になるべき細胞が背側膵臓に観察され、それら細胞は膵外分泌、内分泌および腺上皮細胞ではなく、デスミンおよびビメンチン陽性の間葉系細胞であった。発生初期のTlx1欠損の影響を検討するために、胎齢12.5日の脾臓原基細胞の細胞運動について解析を行い、野生型では方向性のある細胞移動が認められるのに対し、Tlx1欠損胎仔ではそれがランダムな傾向にあることが判明した。マイクロアレイによる遺伝子発現解析でTlx1欠損脾臓原基では脈管新生に関与する遺伝子群が低下していることから、Tlx1は脾臓原基細胞の細胞移動ならびにその後の脾臓原基への脈管新生を制御することによって、脾臓の器官形成に関与することが示唆された。第二に、Tlx1遺伝子のプロモーターに結合し、その発現を制御することが明らかになっているTALEファミリー転写因子であるMeis1ならびにPrep1をTlx1発現細胞で欠損させた場合の脾臓微小環境の変化について解析を行った。その結果、Prep1欠損では影響が認められなかったが、Meis1を欠損させた場合は白脾髄におけるTならびにB細胞の有意な減少が観察された。免疫組織化学的およびフローサイトメトリー解析により、白脾髄を構成する濾胞樹状細胞、線維性細網細胞および辺縁帯細網細胞数の減少を伴う、白脾髄領域サイズの減少が明らかになった。一方、赤脾髄の構造ならびそこに局在する赤芽細胞およびマクロファージ数には変化が認められなかった。Tlx1発現細胞は赤脾髄に局在することから、Tlx1発現細胞におけるMeis1欠損の白脾髄に与える影響は間接的であることが示唆された。
3: やや遅れている
Tlx1-floxコンディショナルノックアウトマウスの作成において、キメラマウスの作製までは進行したが、その後、子孫が得ることができず、再度、ES細胞の段階から作製を再開した。
Tlx1の過剰発現系は確立されているので、過剰発現による脾臓、リンパ節の構造変化について集中して、解析を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
PLoS One
巻: 10, ページ: e0136107
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http://www.ribs.tus.ac.jp/index.php/course/labforstu/goitsukalab/
http://www.ribs.tus.ac.jp/index.php/institute/labforres/goitsukalab/