公募研究
LUBACユビキチンリガーゼ(E3)複合体は、HOIP、HOIL-1L、SHARPINから構成され、ユビキチンのN末端Metを介する直鎖状ユビキチン鎖を生成する唯一のE3である。LUBACによる直鎖状ユビキチン鎖生成は、炎症・免疫応答制御の中枢的な役割を担うNF-κBシグナル経路を特異的に活性化し、ウイルス応答に重要なインターフェロン産生経路に対しては抑制することが報告されており、LUBACは免疫・炎症シグナルを選択的に調節することで生体防御を厳密に制御している。しかし、LUBAC機能を直接制御する細胞内因子の存在やその制御メカニズムは、ほとんど解明されていない。そこで我々は、LUBACの活性中心サブユニットHOIPと結合する新規LUBAC制御因子をタンパク質アレイにより探索した。その結果、RING型E3のRNF126を同定した。RNF126はp21やEGFRをユビキチン修飾し、分解へ導くことが報告されているが、細胞シグナル経路における役割は不明である。今回、我々は分子細胞生物学的手法を駆使してRNF126とLUBACの結合様式、RNF126過剰発現細胞、Rnf126-KO細胞を用いたシグナル解析を行い、RNF126のLUBAC活性制御とその生理機能を調べた。その結果、RNF126は炎症刺激に伴ってHOIPに結合し、LUBACによるNF-κB活性化を抑制した。さらに、CRISPR/Cas9法にて構築したRnf126-KO MEFでは、炎症性サイトカイン刺激によるNF-κB活性化が亢進し、poly (I:C)刺激によるIFN産生は減弱することを見出した。これらの結果は、RNF126はLUBACに拮抗するE3として機能し、RNF126-LUBACのクロストークが炎症・免疫応答制御に重要な役割を果たす可能性を示唆する。
2: おおむね順調に進展している
我々はLUBAC活性を制御する可能性がある新規E3としてRNF126をプロテインアレイによって同定し、そのKO細胞を構築するとともに、NF-κBやインターフェロン産生経路など炎症・免疫シグナル伝達経路への影響を解明しつつある。さらに、Rnf126-KOマウスの構築にも成功しており、今後、個体レベルでの機能解析も進捗すると予想される。全体的な機能解明や論文発表までは未だ時間を要するが、本研究は概ね順調に進展しており、高い波及効果をもつ成果へ帰結すると期待できる。
平成28年度の研究成果をさらに発展させるとともに、下記の項目を解析する。1.Rnf126-KO細胞における免疫・炎症制御遺伝子の発現変動をmRNAアレイによって網羅的に解析し、想定しているシグナル伝達以外への影響を含めて広範な解析を進める。2.免疫・炎症シグナル制御におけるRNF126とRNF126に構造的に類縁のRNF115の標的分子を免疫沈降-質量分析法や網羅的タンパク質アレイによって探索する。同定した標的分子については細胞レベルで機能解析を進める。3.既に当研究室で構築済みのLUBAC-KO細胞を基に、RNF126をともにKOした二重欠損細胞を構築し、比較解析を進めることで、RNF126がLUBACと協調的に働くことで発揮する免疫・炎症シグナル制御への影響を明らかにする。4.Rnf126-KOマウスからB細胞やT細胞、マクロファージを調製し、それらの炎症性サイトカイン、細菌・ウイルス由来の病原体関連分子刺激に対する炎症・免疫応答性などの表現型を解析する。5.RNF126を標的とした活性阻害剤の探索に着手する。これらの研究を介して、LUBACの活性調節に関わる新規E3としてのRNF126の生理機能の全容を明らかにする。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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