研究領域 | ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム |
研究課題/領域番号 |
15H01174
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
Kim Minsoo 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (50466835)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 病原細菌 / エフェクター / ユビキチン / 感染制御 |
研究実績の概要 |
病原性大腸菌を含む腸管病原細菌は近年、多剤耐性菌による感染症例が増加し、有効なワクチンも未開発のため、既存の抗生剤とは作用機序が異なる新しいコンセプトの治療薬の開発が望まれている。近年、病原細菌やウイルスによる感染症においても、ユビキチン修飾系が重要な役割を果たすことが明らかになってきた。本研究では、赤痢菌の感染成立に重要な役割を果たす赤痢菌のユビキチンリガーゼ (IpaH ファミリー) に注目し、治療薬開発を目的として、IpaH の機能阻害剤の開発を進める。すてに得られているIpaH の活性を阻害する候補化合物の性質調べると共に、IpaH と活性阻害化合物との複合体構造を解くことにより、阻害活性と特異性を高めた IpaH 阻害剤の開発を目指す。 本年度は、前年度得られたヒット化合物のから、IpaH 活性阻害能(IC50)が高く、他のユビキチンリガーゼに対する阻害活性の示さない候補化合物を得た。得られた候補化合物を用いて、IpaHと化合物との相互作用様式をBiacoreシステムや等温滴定熱測定(ITC)を用いて調べた。その結果、今回試した4種類の化合物では、IpaHと直接相互作用をみられなかった。リード化合物の設計のために、IpaHとの化合物との共結晶のX線結晶構造解析を試みたが、共結晶は得られなかった。様々な条件で結晶化を試しているところである。赤痢菌のユビキチンリガーゼであるIpaH4.5が宿主のプロテアソーム構成因子(X)と結合し、分解することにより、赤痢菌感染においてプロテアソームの活性を抑制し、MHC class Iによる抗原提示から逃れることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属機関の移動のため、研究室セットアップに時間がかかってしまった。現在は研究に集中できる環境を整えたので、来年度に期待している。
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今後の研究の推進方策 |
化合物との直接結合が見られなかったが、今後、得られた化合物をIpaH発現細胞に添加し、IpaHの基質分子の分解抑制能を精査すると共に候補化合物を再検討し、IpaHとの結合能を持つ化合物の同定を行う。さらにIn silicoの手法を用いて候補化合物を検索する。NELドメインはファミリーの間で相同性が高いことが知られている。IpaH阻害剤を起点として、他の病原細菌のNELファミリーに対する阻害剤の設計・開発を展開する。
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