研究領域 | ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム |
研究課題/領域番号 |
15H01175
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 裕介 東京大学, 放射光連携研究機構, 助教 (50568061)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / ユビキチン / DNA修復 |
研究実績の概要 |
DNA二重鎖切断(DSB)が生じると、ユビキチンリガーゼRNF8がヒストンH1をLys63結合型ユビキチン(Ub)鎖修飾する。続いて、RNF168のLRM-UMI-MIU1ドメインがLys63結合型Ub鎖と特異的に結合することでDSBへと集積する。RNF168はヒストンH2AをモノUb化し、さらに下流のDNA修復酵素群を集積させる。しかしこれまで、RNF168のLRM-UMI-MIU1ドメインによるLys63結合型Ub鎖の認識メカニズムは不明であった。本研究ではRNF168のLRM-UMI-MIU1ドメインとLys63結合型Ub2量体(Lys63-Ub2)の複合体の結晶構造解析を行う。さらに、変異体を用いた解離定数の測定、変異体の細胞内での局在の解析を行うことで、RNF168によるLys63結合型Ub鎖の認識メカニズムとその意義を明らかにする。 平成27年度の研究成果として、RNF168のLRM-UMI-MIUドメインとLys63-Ub2の複合体の結晶を作成し、大型放射光施設SPring8にてX線回折実験を行なった。得られたデータセットをプログラムHKL2000、ccp4i、phenix、cootを組み合わせて解析し、その結晶構造を決定した。得られた結晶構造から、RNF168のLRM-UMI-MIUドメインが8種類あるUb鎖のうち、どのようにしてLys63結合型Ub鎖のみを認識しているのかが、明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、目的の結晶構造を決定することに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の成果として、RNF168-LRM-UMI-MIU1とLys63-Ub2複合体の結晶構造の決定に成功した。本年度は続いて、得られた複合体の結晶構造の情報から、RNF168-LRM-UMI-MIU1ドメインのLys63結合型Ub鎖との相互作用に関わると考えられる残基に変異を導入し、結合の解離速度定数を測定する。解離速度定数の測定は、Lys63-Ub2のC末端にテトラシステインモチーフ(Cys-Cys-Pro-Gly-Cys-Cys)を導入し、緑蛍光試薬FlAsHでLys63-Ub2をラベル後、マイクロプレートリーダーEnVisionを用いた蛍光偏光解析法により行う。また、実験が上手く行かない場合は、Biacoreを用いたSPR法も試みる。解離速度定数の解析結果から、野生型と変異体の間で解離速度定数の変化を比較することでRNF168がどのようにして8種類あるUb鎖の中でLys63結合型Ub鎖を特異的に認識するのかという詳細な機構を明らかにし、結晶構造とあわせて考察する。 さらに、結晶構造および点変異体の解離速度定数解析の情報から、RNF168のLys63結合型Ub鎖との相互作用に重要であると考えられる残基に変異を導入し、細胞内でDNA二重鎖切断に対するRNF168の局在を観察する。細胞内局在試験を野生型、およびLys63結合型Ub鎖との結合能を失った変異体RNF168を用いて行うことで、RNF168によるLys63結合型ポリUb鎖認識が、RNF168のDNA損傷応答にどのような影響を与えるか調べる。
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