研究実績の概要 |
本年は、難培養性好熱性アーキアのUblシステムが多数のタンパク質が共存する細胞内においても機能しうるかを検証した。ホストとして培養可能でありかつ形質転換法が確立している超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisを用いて本Ublシステム構成因子の発現を試みた。まずは、Ublオペロン全体をT. kodakarensis内での発現プラスミドに組込んだ(pRPEx01p)。また本菌のUblはGly-Glyモチーフの後方にペプチド配列が存在する前駆体型(pUbl)であることから、この部分を遺伝子工学的に改変して成熟体Ublを発現するベクター(pRPEx01m)も作製した。これらのベクターをT. kodakarensisに導入し、ASW-YT+Pyr培地で70°C, 24 h培養した。得られた細胞抽出液用いてWestern blot解析を行った結果、共にUb, E1, E2の発現は確認されたものの、E3の発現は確認されなかった。そこでE3の開始コドンを確認したところTTGであり、翻訳開始効率の低下が予想されたことから、これをATGに改変したベクターpRPEx02p/pRPEx02mをそれぞれ作製した結果、E3を含む全タンパク質の発現を確認した。次に、T. kodakarensis KPD1株のゲノム内に、in vitro再構成系において本系の基質タンパク質の遺伝子を導入した株(KPD1Mc株)を作製した。本株にpRPEx02p/pRPEx02mを導入して同様に実験を行った結果、Western blot解析によりUbl化されたタンパク質の存在が確認された。この結果より、本系は細胞内においてもタンパク質修飾活性を示すことが判明し、本系が真核生物のUb系と同様に実際の細胞内でもタンパク質修飾機能を有することが強く示唆された。
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