公募研究
(1)鉄との結合状態が HRZ のタンパク質分解と細胞内局在に与える影響の解析:ドメインに変異または欠失を導入した HRZ と GFP との融合遺伝子を発現する形質転換イネを数種類作製した。これらのイネを鉄十分条件および鉄欠乏条件で水耕栽培し、共焦点レーザー顕微鏡で GFP を検鏡した。完全長の HRZ を導入したイネでは、HRZ-GFP 融合タンパク質の発現はほとんど観察されなかったが、Zn finger、RING finger、Rubredoxin-type fold を含むC末端側のドメインを欠失した HRZ を導入したイネでは明確な発現が観察された。鉄栄養条件により発現量と細胞内局在が変化する傾向がみられた。(2) HRZ が鉄硫黄クラスターと結合して機能を変化させるかどうかの検証: 2種類の鉄硫黄クラスター合成・輸送に関わると期待されるタンパク質が HRZ と相互作用することを酵母 two-hybrid 法と pull-down 法により明らかにした。このタンパク質の発現量を変化させた形質転換イネの作製に着手した。(3) HRZ によるユビキチン化標的タンパク質の同定と解析:酵母 two-hybrid 法とプロテオーム比較解析により、HRZ のユビキチン化基質タンパク質の候補を見いだした。これらの候補タンパク質のうち、鉄栄養制御に関わる可能性の高いものについて、当該タンパク質の発現量が変化していると期待されるトランスポゾンおよび T-DNA 挿入変異体イネを取得し、次世代の種子を採取した。また、特に有望な候補タンパク質については発現量を変化させる形質転換イネの作製に着手した。HRZ が鉄欠乏応答性遺伝子の発現だけでなく、ジャスモン酸経路に関わる遺伝子の発現も制御することを発見した。さらに、鉄欠乏のごく初期にジャスモン酸シグナリングが活性化することを見いだした(Kobayashi et al. 2016 Plant Mol. Biol. in press)。
3: やや遅れている
(1)鉄との結合状態が HRZ のタンパク質分解と細胞内局在に与える影響の解析:ドメインに変異または欠失を導入した HRZ と GFP との融合遺伝子を導入したイネの多くは形質転換効率が低く、解析に必要な系統数を確保するのに苦労している。また、鉄栄養条件により発現量と細胞内局在が変化する傾向について、個体差・系統間差が存在するため、統一的な見解を得るまでに至っていない。(2)HRZ が鉄硫黄クラスターと結合して機能を変化させるかどうかの検証:おおむね順調に進展しているが、人手の制約により鉄硫黄クラスターの生化学的調査については後回しになっており、有効な実験系の構築に至っていない。(3)HRZ によるユビキチン化標的タンパク質の同定と解析:ほぼ予定通り進行している。鉄欠乏応答とジャスモン酸シグナリングの関連に関する論文を出版することができた(Kobayashi et al. 2016 Plant Mol. Biol. in press)。
(1)鉄との結合状態が HRZ のタンパク質分解と細胞内局在に与える影響の解析:ドメインに変異または欠失を導入した HRZ と GFP との融合遺伝子を導入したイネの作製を継続し、多くの系統を解析に供することにより上述の問題点の解決を試みる。また、酵母を用いた実験系および in vitro 実験系の構築を試みる。(2)HRZ が鉄硫黄クラスターと結合して機能を変化させるかどうかの検証:作製中の形質転換イネの種子が取得でき次第、次世代を鉄十分条件および鉄欠乏条件で水耕栽培し、導入遺伝子の発現量、鉄欠乏応答および HRZ のタンパク質発現量を調査する。有望な結果が得られた場合、鉄硫黄クラスターの生化学的調査について実験系の構築に着手する。(3)HRZ によるユビキチン化標的タンパク質の同定と解析:入手した変異体および作製中の形質転換イネについて、次世代を鉄十分条件および鉄欠乏条件で水耕栽培し、導入遺伝子の発現量、鉄欠乏応答および HRZ のタンパク質発現量を調査する。また、in vitro 系によるユビキチン化反応の検証を行う。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Plant Molecular Biology
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10.1007/s11103-016-0486-3