研究領域 | ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム |
研究課題/領域番号 |
15H01190
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
柳 茂 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (60252003)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ユビキチンリガーゼ / オルガネラ |
研究実績の概要 |
酵母においてはミトコンドリアとERの接着構造としてERMES複合体が同定されており、カルジオリピンの生合成など脂質輸送に機能的重要性が明らかにされているが、高等動物である哺乳類においてはMAMの構造や機能については未だ不明な点が多い。一方、これまで行われてきたMAMの解析/定量方法に深刻な問題点が提起された。従来のMAMの解析方法は電子顕微鏡による観察や免疫組織染色法による2次元レベルでの解析が行われていたが、ミトコンドリアやERおよびMAMは複雑な3次元構造をとるので必然的に2次元レベルでの解析では正確性に欠けていたのである。事実、MAMの解析手法の違いによって正反対の結論が導きだされているので、もはや2次元レベルの解析には限界があり、これからは3次元レベルでの解析の必要性が迫られていた。近年、SBF-SEMを用いてオルガネラの構造を3次元で構築することが可能となった。そこで今回、私たちはSBF-SEMを用いてマウス海馬神経細胞のミトコンドリアの構造を立体的に構築し、MAMを正確に定量する新たな方法を樹立し、はじめて生体内におけるMAMの特徴を明らかにすることができた。興味深いことに、細胞体において枝分かれした複雑な構造を持つ巨大なミトコンドリアの存在である。このことは生体内においてミトコンドリアとERは機能的に密接な関係があること示している。また、ミトコンドリアの体積と枝分かれの数はMAMの数や総面積と正の相関が示された。このことはMAMがミトコンドリアの体積と枝分かれの数を決定している可能性が示唆された。現在、MAM形成に関与するミトコンドリアユビキチンリガーゼMITOLを欠損したマウス脳の海馬において、SBF-SEMを用いて解析を行った結果、MAMが有意に減少していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高等動物である哺乳類においてはMAMの構造や機能についてはまだよくわかっていなかった。また、今回、私たちはSBF-SEMを用いてマウス海馬神経細胞のミトコンドリアの構造を立体的に構築し、MAMを正確に定量する新たな方法を樹立し、はじめて生体内におけるMAMの特徴を明らかにすることができた。以前私たちのグループは培養細胞を用いてMITOLがMfn2をユビキチン化することによりMfn2のオリゴマー化を促進してMAMを誘導することを報告したが、生体内におけるMITOLの役割は不明であった。今回、神経特異的MITOL欠損マウスを解析した結果、生体内においてもMfn2の活性化が抑制されており、MAMが大きく減少していることがわかった。したがって、この変異マウスはMAMの異常によるミトコンドリアの形態や機能的変化を観察できる良いモデルになると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今回、核周辺の細胞体に枝分かれした巨大なミトコンドリアが多く存在していることがわかった。一方、軸索のミトコンドリアは小さくMAMの数や総面積も小さいことがわかった。今後、局在の異なるミトコンドリアを生化学的に単離してミトコンドリア機能を解析することによりそれぞれの機能の違いが明らかになることが期待できる。MITOLを欠損したマウス脳の海馬において、MAMが有意に減少していることが明らかになったので、今後、MAMの破綻による脂質代謝の異常、とりわけミトコンドリアの機能に直結するカルジオリピンの代謝に着目して解析したい。
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