研究領域 | ユビキチンネオバイオロジー:拡大するタンパク質制御システム |
研究課題/領域番号 |
15H01194
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
横須賀 忠 東京医科大学, 医学部, 教授 (10359599)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 免疫学 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
T細胞が活性化する際、抗原提示細胞と接着し、抗原ペプチドとMHCの情報を受け取る。その際、2つの細胞の接着面は「免疫シナプス」と呼ばれ、T細胞受容体(TCR)とその下流のシグナル伝達分子から成る凝集塊「TCRマイクロクラスター」で構成される二次元平面である。TCRマイクロクラスターは活性化の単位でもあるが、抑制性分子が会合することや、最終的にインターナリゼーションされることから、シグナル終焉の単位とも考えられる。本課題研究では、TCRのインターナリゼーション・分解に重要なE3ユビキチンリガーゼc-ClbおよびCbl-bを可視化し、TCRシグナル終焉のメカニズムを明らかにすることを目的とした。 1)ユビキチンのイメージング解析:Cblファミリー分子とユビキチンを可視化するため、それぞれの分子とのGFPキメラ分子を作製し、免疫シナプス内でTCRと共にクラスターを形成することを示した。 2)エンドサイトーシス分子との関連性の解析:クラスリン依存的エンドサイトーシス経路との関連性を示すため、クラスリン軽鎖、ダイナミン、エンドサイトーシス蛋白EPS15の挙動をイメージングし、それらがTCR直下のシグナル伝達分子が会合するより30秒遅く、TCRマイクロクラスターにリクルートすることを明らかにし、TCRシグナル活性化に対するネガティブフィードバックの過程であると考えられる。 3)特異的ユビキチン鎖の同定:TCRマイクロクラスターに凝集するユビキチンが、K63優位であることを、特異的ユビキチン鎖に対する抗体にて同定した。 4)遺伝子欠損マウスを用いたイメージング解析:Cblファミリー分子の遺伝子欠損マウス由来から末梢T細胞を調整し、TCRのエンドサイトーシスとユビキチン化をイメージングした。その結果、Cbl-b依存的にK63ユビキチン修飾とTCRのエンドサイトーシスが誘導されることを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TCRマイクロクラスター、E3ユビキチンリガーゼおよびユビキチンの同時イメージングに成功し、これまで生化学でしめされていたTCRのインターナリゼーションと分解の減少を追従し、さらにその新たなメカニズムの解明に至り、本年度の研究実施計画を沿った実験が行うことが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
特異的ユビキチン結合のイメージングを、特異的抗体だけでなく、2015年に4報報告された特異的ユビキチン血追うのイメージングプローブを使い、また、まだ報告されていないK48結合のプローブを作製し、本年度のデータの正当性を再評価する。また、本年度は末梢T細胞に関する研究を進めたが、Cblファミリーの機能的差があると考えられている中枢(胸腺)T細胞のCbl分子およびユビキチンの可視化を行い、末梢T細胞を比較することで、一般に自己免疫に関わるとされるCblファミリー分子の疾患発症機序の解明へと繋げる。
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