公募研究
シグナル動態を制御する蛋白修飾を薬剤標的とすることで副作用のない治療薬の提示が可能になる。それ故、シグナル伝達の時間的動態の理解はその重要性に対する認識が高まっている。B細胞は病原体を抗原受容体(BCR)で認識し、BCRとCD40等の協同受容体からのシグナルで細胞の分化が決定される。BCRとCD40はシグナル経路の多くを共有している。様々な刺激に対して定性的に同一の分子が活性化されるにも拘らず異なる細胞応答を生み出す機構は、時間情報により制御されている活性動態の変化であると考えられる。申請者はBCRシグナルネットワークについて 詳細な分子動態の計測と数理モデルを駆使し、正のフィードバック機構が機能していることを証明し、この機構がB細胞に内在する活性化のスイッチ様出力の閾値を設定することを明らかにした。このネットワーク解析の実績を活かし、BCRとCD40が共有するシグナルネットワークから誘導される細胞応答を制御する機構を解析する。これまでの解析から得ているNF-κB活性動態を制御する候補分子は、6分子同定している。この中で唯一正にシグナル動態を制御している分子に着目し、シグナルの活性化動態と誘導される遺伝子の発現動態を定量的・経時的に計測し、数理モデル解析を行い、実際シグナル動態を正の制御している分子はユビキチン化酵素であるIAPであることを見出した。現時点でここまでを論文にまとめ近く出版される予定である。
3: やや遅れている
活性動態を正に制御するユビキチン化酵素IAPは遺伝子発現を介して正の動態制御に関わり、かつ早期のシグナル伝達にも関わるため、その遺伝子欠損はシグナル活性そのものを大きく減衰させる。そのため動態制御特異的に関与するアミノ酸部位の特定が望ましい。IAPの標的となる分子が不明であるため、定量質量分析から機能部位の同定と関わるネットワークの推定を行っている。
初期培養細胞による質量分析は困難を極めているため、シグナル動態と細胞分化を再現可能な細胞株による新たな系を検討している。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 25738
srep25738
Immunology and Cell Biology
巻: in press ページ: in press
icb.2016.44.