公募研究
カラクシンはカルシウム依存的に外腕ダイニン重鎖に結合し、微小管の滑り運動を制御する。ホヤ精子では、卵に向かって走化性を示す際の非対称波鞭毛運動に必須であり、ウニ胚の繊毛では屈曲率の上昇と協調的な繊毛運動に関与している。しかしながら、脊椎動物におけるカラクシンの機能については知られていなかった。本研究では、マウス繊毛におけるカラクシンの機能および生体調節との関連を、ノックアウトマウスを用いて解析した。その結果、カラクシン欠損マウスは繊毛病の様相を呈すことがわかった。組織ごとに繊毛の構造や運動を詳細に調べた結果、屈曲の伝播異常が見られるものの、予想に反し精子は受精能を有した。気管繊毛も屈曲異常やフロー速度の低下が見られたが、方向性を持った外液フローを起こすことがわかった。カラクシン欠損によりもっとも顕著に現れたのが、水頭症と内臓逆位であった。水頭症は脳脊髄液フローの異常で起こることが知られているが、上衣細胞繊毛の運動や外液フローは見かけ上正常であった。一方、ノックアウトマウスの約半数に内臓逆位が見られた。nodalやleftyの遺伝子発現を調べた結果、カラクシンノックアウトマウスではこれらの左側特異的発現は乱れ、右側に発現するもの、両方に発現が見られるもの、発現が見られないものが得られた。これらの遺伝子の非対称発現はノードにおける繊毛フローが関与しているため、ノード繊毛の観察を行なった。その結果、ノードの左向きのフローが著しく減少し、ランダムに近い状態になっていることが明らかになった。走査型電子顕微鏡による観察の結果、ノード繊毛の数が著しく減少していることが示され、カラクシンがノード繊毛の形成に関与するという新たな知見が明らかとなった。これらの結果は、中心対微小管がないノード繊毛に特異的な外腕の機能ならびにカラクシンによる調節機構が関与している可能性を示唆している。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Journal of Poultry Science
巻: 54 ページ: 73-79
10.2141/jpsa.0160079
J Cell Sci.
巻: 129 ページ: 2757-2766
10.1242/jcs.185983
http://www.shimoda.tsukuba.ac.jp/~inaba/research.html