研究領域 | シリア・中心体系による生体情報フローの制御 |
研究課題/領域番号 |
15H01202
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
小田 賢幸 山梨大学, 総合研究部, 教授 (20569090)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 運動性繊毛 / クライオ電子顕微鏡 / 構造生物学 / 分子モーター |
研究実績の概要 |
本研究では、運動性繊毛構築のメカニズムをクライオ電子顕微鏡と遺伝子操作を用いて解析した。平成27年度の研究により、主に2つの成果を得た。 1.ダイニンモーターが24nm周期で整列する分子メカニズムの解明 運動性繊毛の波打ち運動は外腕ダイニンと内腕ダイニンの二種類の分子モーターにより駆動されている。外腕ダイニンは微小管上を24nm周期で整列するが、これはドッキング複合体が「分子モノサシ」として機能することにより作られる構造であるとされてきた。我々は構造ラベリングとクライオ電子顕微鏡を用いてドッキング複合体の構成タンパク質の3次元位置を特定し、これらが分子モノサシとは考えられないほど可動性が高いことが判明した。また、ドッキング複合体と外腕ダイニン本体を分離精製することに成功し、ドッキング複合体が無くとも、外腕ダイニンが24nm周期で整列することを証明した。以上より、外腕ダイニンの周期構造は外腕ダイニン自身が分子モノサシとして機能することで作られることを示した(Oda et al Journal of Cell Science 2016)。 2.外腕ダイニン軽鎖中間鎖複合体の機能解明 外腕ダイニンはモーター活性を持つ重鎖の他に、11種の軽鎖と2種の中間鎖を持つ。これらの内、3種の軽鎖と2種の中間鎖の3次元位置をクライオ電子顕微鏡を用いて同定したところ、総ての分子がほぼ同じ突起構造に局在することを発見し、ODA-Beakと命名した。さらに化学誘導二量体形成法を用いて、ODA-Beakがダイニン制御複合体との相互作用を介して繊毛運動を制御することを示した(Oda et al Molecular Biology of the Cell 2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、すでに2つの論文を発表し順調に進展している。新任地に移動したが、凍結装置の立ち上げも完了し、継続して研究を進める環境が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度も、クライオ電子顕微鏡と構造ラベリングを用いて、繊毛タンパク質の機能・構造解析を行う。すでに複数の有望な変異株を得ており、これらの運動性解析と構造解析から繊毛運動と構築の分子メカニズムを更に追究する予定である。
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