本研究では、運動性繊毛の運動制御機構をクライオ電子顕微鏡と遺伝子操作を用いて解析した。平成28年度の研究により、主に2つの成果を得た。 1.チューブリン修飾による微小管架橋機構の解明 微小管を構成するチューブリンはアセチル化やグリシル化など多くの翻訳後修飾を受ける。特にポリグルタミル化は繊毛の運動性に関係があることが報告されていたが、その詳細な分子メカニズムは不明であり、構造解析も行われていなかった。我々はポリグルタミル抗体(polyE)を用いて、繊毛微小管の三次元構造解析を行った。その結果、負に荷電したポリグルタミル化チューブリンと正に荷電したダイニン制御複合体の間の静電気力により、繊毛微小管同士が架橋され、その運動性が制御されることを示した。(2017年4月現在投稿中) 2.内腕ダイニン制御複合体の発見 繊毛の運動能はダイニンというモータータンパク質により駆動される。繊毛のダイニンは外腕および内腕の2種に分けられ、さらに内腕ダイニンは主たる7種に分けられる。中でも内腕ダイニンfは唯一の二量体内腕ダイニンであるが、そのモーター活性は生化学的に測定すると極めて小さく、繊毛運動における内腕ダイニンfの意義は不明であった。我々は内腕ダイニンfのモータードメインに結合するtether complexの欠損株を単離し、tether complexが内腕ダイニンが繊毛内でモーター活性を発揮する際に構造を支える機能を持つことを明らかにした。(2017年4月現在投稿準備中)
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