公募研究
繊毛の9+2構造は、原生動物から哺乳類に至るまで共通しており、真核細胞がつくりあげた細胞内運動器官として非常に複雑で精緻なものである。効果的に水流を引き起こすためには、9+2縦列横列に多数配向しているダイニンが局所的に活性化され、繊毛内で周期的に伝播しているはずであるが、そのダイナミックな制御機構はわかっていない。これを明らかにするために、本研究ではまず、テトラヒメナの繊毛打運動を3次元空間で詳細に計測する基盤を確立した。生きている状態のテトラヒメナをガラスキャピラリーを用いた吸引により細胞体を固定し、固定側と反対の細胞表面から出ている繊毛1本にビーズを結合させて、ビーズの運動を計測した。ビーズの位置を連続して3次元的に計測するために、連携研究者(矢島)が開発した光路の半分にプリズムを入れて位相をずらすことで、xy平面の位置計測に加えて z軸方向の変位を求めた。その結果、繊毛に結合したビーズの運動は、ほぼ円形に近い軌跡を示した。また、テトラヒメナの繊毛形成の起点となる基底小体(中心子)の構成分子であるセントリン分子に蛍光タンパク質を融合した組換え体を作製したところ、繊毛の基底部位が繊毛列線に沿って蛍光をもつことが確認できた。この両者を組み合わせることにより、繊毛の基部と繊毛に付着したビーズの相対的な位置を特定することで、繊毛の運動を定量的に計測する基盤を確立できた。
2: おおむね順調に進展している
繊毛の基部のマーカーを得ることができたので、基部からの距離がさまざまなところに結合させたビーズの運動を多数定量することにより、繊毛1本の長さに沿った位置情報を3次元的に解析する。これにより、繊毛1本の3次元の運動パターンを詳細に解析することが可能になる。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件)
Molecular Biology of the Cell
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