公募研究
ROCOファミリーキナーゼLRRK1はRas様GTPaseドメインとMAPKKK様キナーゼドメインを持つユニークな分子である。近年ファミリー分子LRRK2がパーキンソン病原因遺伝子(Park8)であることが明らかとなり、臨床的にも注目を集めている。しかしLRRK1及びLRRK2の生理的機能に関してはほとんど明らかになっていなかった。申請者らはLRRK1が活性化したEGFRと複合体を形成し、キナーゼ活性依存的にEGFR細胞内トラフィックを制御することを明らかにしたさらに最近、LRRK1が中心体においてPLK1によってリン酸化・活性化され、中心体機能に重要な役割を果たしていることを明らかにした。細胞周期間期の中心体は、一次繊毛(Primary cilia)の形成・退縮に重要なことが知られている。我々はLRRK1が、キナーゼ活性依存的にシリアの形成・退縮を制御することを見出した。そこでLRRK1がどのようなメカニズムで、シリアの形成・退縮を制御しているのか明らかにすることを試みた。昨年度までの研究から、(1)LRRK1は間期の母中心小体で活性化し、ダイニン結合分子NDEL1をリン酸化すること、(2)LRRK1をノックダウンしたRPE1細胞ではシリアの退縮が阻害されることを明らかにした。また質量分析を用いた解析から、LRRK1によるNDEL1のリン酸化候補部位を複数同定することに成功した。最近NDEL1がシリア退縮に重要であるとの報告がなされたことから、LRRK1はNDEL1をリン酸化することでシリア退縮を制御している可能性があると考えている。
2: おおむね順調に進展している
これまでLRRK1がキナーゼ活性依存的にシリアの形成・退縮に機能していることを明らかにしていた。このプロセスにおけるLRRK1の標的タンパク質を探索したところ、以前我々はNDE1をLRRK1の基質として同定していた。しかしその後の解析から、NDE1はLRRK1による別の中心体機能に重要な可能性が明らかとなってきた。一方今回、LRRK1の新たな基質としてNDE1とよく似た分子NDEL1を同定することに成功した。昨年度までの解析から、LRRK1はNDEL1をリン酸化することで、シリアの形成・退縮を制御している可能性を強く示唆するデータを得ることができた。
今後はシリア形成・退縮における、LRRK1によるNDEL1のリン酸化の役割について解析していく予定である。シリアの形成・退縮は細胞周期進行を制御しており、細胞の癌化とも密接に関係している可能性が指摘されている。このことからLRRK1はNDEL1をリン酸化し、シリアの形成・退縮を制御することで、細胞周期の進行をコントロールしている可能性がある。そこでLRRK1によるシリア形成・退縮の分子メカニズムの解明とともに、癌化との関係についても解析を行う予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Nat. Cell Biol.
巻: 17 ページ: 1024-1035
10.1038/ncb3204