本申請では、光遺伝学の手法等を用いて、ヒト細胞において紡錘体極派生のPlk1キナーゼの局在、活性勾配を非対称化する操作法を確立し、紡錘体極派生シグナルの非対称化が紡錘体の配置・構造、細胞分裂後の娘細胞サイズの非対称化に十分かどうか検証を行うことを目的としている。
[本年度の結果] 昨年度に作成した、光照射依存的中心体局在化ツールPACT-BFP-iLIDを、ゲノム編集技術によってAAVS1部位にノックインし、恒常的に発現するヒト細胞株を樹立した。この株を用いると、光照射依存的に細胞質に局在するRFP-nanoを分裂期中心体に局在化させる事に成功したが、その局在範囲が狭いため、そもそも中心体に局在するPlk1の量を2極間で明らかな違いが見られるほどに非対称化できなかった。そこで、より広範囲な紡錘体極領域に局在するNuMAのC末端に、BFP-iLIDをノックインした細胞株を樹立したところ、PACT-iLIDと比較して、有意なPlk1-RFP-nanoの非対称化を誘導することに成功した。また恒常的に活性型、不活性型のPlk1キナーゼの中心体局在を光操作するために、Rosa26部位から発現誘導可能なノックイン株を作成することにも成功した。またより顕著なPlk1の非対称化を誘導する目的で、iLIDを紡錘体全体に局在化できる細胞株の作成も進めている。
[重要性、意義] 本研究で樹立した、光照射依存的に、紡錘体極間に人為的に非対称性を誘導する技術を用いれば、今後Plk1キナーゼのみならず、様々な分子の非対称化の誘導とその表現型の解析を通じて、それらの紡錘体極での機能の十分性を理解できるのみならず、紡錘体構造や配置の新たな操作法にもつながり、異なる角度から紡錘体形成や配置制御の理解に貢献できると考えられる。
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