公募研究
繊毛内には、多数のタンパク質が特異的に局在し、それらの輸送は厳密に制御されている。このような繊毛内タンパク質輸送は、多数のサブユニットからなるいくつかのタンパク質複合体(IFT-A、IFT-B、BBSome複合体)が、キネシンやダイニンのようなモータータンパク質と共同して機能するすることによって媒介される。私たちが新たに開発したタンパク質間相互作用解析法(VIPアッセイ:Vissible Immunoprecipitation)を活用して、平成27年度には、BBSome複合体(8サブユニットからなる)、およびIFT-B複合体(16サブユニットからなる)の極めて複雑な構築様式を解明した。特に、IFT-B複合体は、10サブユニットからなるコアサブ複合体と6サブユニットからなるペリフェラルサブ複合体に分けられ、これまではIFT-B複合体に含まれるのかどうかも不明であったTTC26とCluap1(IFT56とIFT38と再命名)がそれぞれのサブ複合体に含まれることを証明した。さらに、IFT38に関しては、ノックアウトマウス由来の繊維芽細胞を用いて、IFT38が繊毛形成にとって必須であること、およびその繊毛形成にはIFT38がIFT-Bのペリフェラル複合体に含まれることが必須であることを証明した。このような構築様式の解明は、繊毛内タンパク質輸送複合体に関する今後の機能研究において大いに役立つと考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
平成26年度に開発したVIPアッセイが予想以上に洗練され、平成27年度にはこのアッセイ法を活用したタンパク質間相互作用解析が予想以上に進展した。このアッセイが当初予想していたよりもはるかに複雑なタンパク質間相互作用に解析にも応用可能であることがわかり、BBSome複合体とIFT-B複合体の極めて複雑な構築様式を解明することができた。他にも、細胞内タンパク質輸送に関与するExocyst複合体(8サブユニットからなる)の構築様式の解明にも成功している。これらの複合体の構築様式は、VIPアッセイの開発なしには不可能であったことから、当初の計画以上に進展していると判断する。さらに、このような構築様式の解明は、繊毛内タンパク質輸送複合体に関する今後の機能研究において大いに役立つと考えられる。
平成28年度には、以下のことを明らかにする。1.8サブユニットからなるIFT-A複合体の構築様式も解明する。これまで、IFT-A複合体の構築様式の解明が難航していた理由の一つとして、この複合体のサブユニットがいずれも大きいためにcDNAのクローニングが難しい点があった。しかし、この問題が克服できたので、VIPアッセイを活用して、IFT-A複合体の構築様式の解明がすぐに進むと予想される。2.IFT-B複合体にはキネシンファミリーのモータータンパク質のkinesin-2およびKIF17が結合して、IFT-B複合体の繊毛内輸送を媒介することが知られている。しかし、これらのキネシンがIFT-B複合体にどのサブユニットを介して結合するのかや、IFT-Bの繊毛内輸送にどのようにかかわるのかはわかっていない。そこで、VIPアッセイによってこの結合の様式を明らかにする。3.IFT-B複合体には、低分子量GTPaseのArl13bが結合することも知られている。しかし、Arl13bがIFT-B複合体にどのサブユニットを介して結合するのかはわかっていない。そこで、VIPアッセイによってこの結合の様式を明らかにする。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件)
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