研究領域 | シリア・中心体系による生体情報フローの制御 |
研究課題/領域番号 |
15H01212
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 敬宏 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 准教授 (80423060)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 1分子計測 / 細胞膜 / 一次シリア / 拡散運動 |
研究実績の概要 |
本研究は、一次シリアを細胞体から隔てている境界構造の分子構築と、その構造が拡散障壁として、しかも、特定の分子の選択的な出入りを決めるフィルターとしてはたらく機構の解明を目的とする。そのために、生細胞超解像-高速1蛍光分子同時観察顕微鏡システムの3次元拡張をおこない、一次シリア基底部の構造(細胞膜の配向)を3次元的に把握しながら、拡散障壁構成分子の超解像観察、および、シリア局在分子/非局在分子の1分子追跡をおこなう。 本年度は、以下の研究進捗があった。 (1) 生細胞超解像-高速1蛍光分子観察顕微鏡の3次元拡張 シリンドリカルレンズを利用した非点収差法のための光学系を、生細胞超解像用カメラ、高速1分子観察用カメラそれぞれの前に追加し、拡散障壁の超解像構造と、そこでの1分子の出入りが3次元で観察できるようになった。 (2) 拡散障壁超解像観察のための蛍光プローブの検討 ブリンキング (明滅) 型の制御が可能な超解像蛍光プローブ (rsEGFPやDronpaなどのタンパク質プローブ、ATTO655やHMSiRなどの色素プローブ) を検討したが、ブリンキング頻度が適切でない (rsEGFP、Dronpa) 問題や、細胞膜透過性が十分でない (ATTO655、HMSiR) 問題が明らかになり、光変換型の蛍光タンパク質プローブ (mEos3.2、dendra2) のほうが、拡散障壁候補分子の超解像観察に適していることがわかった。この結果にもとづき、mEos3.2標識した拡散障壁候補分子の、安定発現株 (RPE-1細胞) の取得を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一次シリア基底部は顕微鏡のz軸(上下)方向に傾いた構造を取ることが多いので、xy軸(水平)方向に投影した構造と1分子運動を観察するだけでは、拡散障壁の分子選択機構を正確に理解することは容易でなかった。拡散障壁の超解像構造と、そこでの1分子の出入りをともに3次元で観察できるようにする拡張をおこない、さらに、超解像観察する拡散障壁候補分子の選定、蛍光標識法の検討、安定発現株の取得を進めたことにより、本研究の作業仮説「一次シリア基底部の分子選択的拡散障壁機構」を本格的に検証するための準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 一次シリア基底部の細胞膜に存在する拡散障壁の分子構築の実体に迫る。 細胞体と一次シリアを構造的に隔てている拡散抑制機構を、私がこれまでの研究で見出してきた、[1] 膜骨格フェンス効果、[2] アンカード膜タンパク質ピケット効果、[3] 脂質ドメイン効果に分類し、これら3つの仮説の検証をもって、拡散障壁の分子構築に迫る。RPE-1ヒト網膜色素上皮細胞のベーサル面に形成された一次シリアの基底部において、transition fiber、Y 型リンカー、ciliary necklace に局在する拡散障壁候補分子の超解像観察をおこない、基底部におけるそれぞれの3次元構造を調べる。 (2) 拡散障壁の分子選択性と、出入りを制御する機構を調べる。 上記の拡散障壁候補分子の超解像観察と同時に、シリア局在分子(Smoothened、Sstr3、Htr6、PDGFRα)、シリア非局在分子(リン脂質/スフィンゴ糖脂質蛍光アナログ、トランスフェリン受容体)の1分子3次元追跡をおこない、拡散障壁通過の有無を調べる。通り抜けられない場合は3つの作業仮説のどの機構により拡散抑制が起こっているか、通り抜けられる場合は、その輸送過程を明らかにする。
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