HeLa細胞では、間期における細胞形態によって、分裂期の紡錘体の二次元平面上の配置方向が制御される。分裂期の球体の細胞形態への変化の中で、retraction fiberと呼ばれるアクチンファイバーが出現し、テントの「張り綱」のように細胞外基質への接着を担う。retraction fiberが最長で密度が高くなる領域に紡錘体が向くこと、retraction fiberには張力が働きレーザーカットすると紡錘体の向きが変わりうることが報告されている。しかし、この分子メカニズムはわかっていなかった。分裂軸制御因子Gαi、LGN、NuMAが、このメカニズムの最終的な分裂軸方向決定因子であった。Gαi、LGN、NuMAの三日月状局在の位置が紡錘体の配置方向を決めていた。我々は、Pacsin3及びCaveolin1の局在もよく似た膜局在位置を示すこと、Caveolin1の発現抑制は分裂方向が間期細胞形態から予測される方向に一致しないことを見出した。興味深いことに、この時Gαiの三日月状局在は存在し、紡錘体はGαiの局在位置の方向を向いていた。即ち、Caveolin1は間期の細胞形態と分裂軸制御因子の三日月状局在の位置をリンクさせる機能を持っていることが明らかとなった。さらに中間径フィラメントkeratin8(Krt8)が分裂期細胞膜の非対称な裏打ち構造を構築しCaveolin1の膜局在を制御する可能性を見出した。画像解析によるモデリング、間期-分裂期の細胞骨格再構成におけるKrt8とCaveolin1の動態の相関性の解析を行い、両者の相関を認めた。
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