公募研究
Ror2 KOマウス胚は腎臓発生に異常が認められたが一次繊毛形成に異常は認められなかった。また、Ror2 KOマウス胚由来線維芽細胞においても一次繊毛は正常に認められ、IFT20の発現レベルも正常であった。一方、Ror2が高発現している複数のがん細胞株においては一次繊毛が認められず、Ror2の発現抑制によってIFT20の発現が低下した。したがって、Ror2シグナルはがん細胞特異的にIFT20の発現を促進し、一次繊毛非依存的な機能に関与することが示唆された。がん細胞においてIFT20はゴルジ体と中心体に発現が認められたため、IFT20を発現抑制しそれらの形態に与える影響を解析した。その結果、コントロール細胞においては、ゴルジ体が中心体近傍に密集して配置していたのに対し、IFT20発現抑制細胞ではゴルジ体が核周辺に分散していた。このようなゴルジ体の分散はRor2発現抑制細胞においても認められたが、Ror2発現抑制細胞にIFT20を強制発現させることでゴルジ体の異常は回復した。一方、IFT20やRor2を発現抑制しても中心体の形態や数には異常が認められなかった。したがって、がん細胞においてIFT20はRor2シグナルによって発現誘導され、ゴルジ体の配置や形態を制御していることが示唆された。ゴルジ体の配置や形態制御には微小管が中心的な役割をになっていることから、IFT20と微小管形成との関係について解析した結果、IFT20発現抑制細胞においては、中心体由来微小管は正常に形成されるが、ゴルジ体由来微小管の重合が抑制されることが示された。これらの結果から、IFT20はゴルジ体において微小管重合を促進することによって、ゴルジ体の形態や配置を制御していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
Ror2-IFT20経路ががん細胞特異的な役割を担っていることが明らかになったことから、がん細胞に焦点を当てた機能解析を発展させることができた。実際、IFT20がゴルジ体における微小管重合に関わるという新規な機能を見出し、さらなる分子機構解析に進むことができた。
Ror2-IFT20のがん細胞における機能を分子レベルで解明するため、ゴルジ体の微小管重合に関わる因子とIFT20との物理的・機能的相互作用について、超解像顕微鏡などを駆使した細胞生物学的研究を中心に進める。また、マウス腎臓発生におけるRor2の機能とIFT20の機能を明らかにするために、当初予定の発生生物学的解析を進める。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Genes to Cells
巻: 21 ページ: 325-334
10.1111/gtc.12342