卵管では、向きが揃った繊毛運動により卵巣から子宮への卵胞の輸送を可能にしている。細胞膜上でPCP因子が機能し、細胞極性を整え、その情報がアピカル面付近の細胞骨格系に反映され、更に多繊毛の基底部の構造を介して繊毛の向きを整えると考えられる。マウス卵管上皮において、これらを結ぶ機構を解明することを本課題の目的としている。 これまでに、野生型の生後の卵管の発達において、繊毛細胞がどのように出現し、細胞内で多繊毛がどのように配置されるかについて研究を行った。本年度はPCP変異体を用いた解析を行い、多繊毛細胞の形成される過程を比較した。更に、繊毛の基底部を傾向標識するトランスジェニックマウスを作成し、個々の細胞内での繊毛の向きを判定することを試みた。抗体染色によっては光学顕微鏡の分解能の限界付近で何とか繊毛の向きを判定することが可能となった。作成したトランスジェニックマウスにおいては、蛍光が非常に弱いこと、褪色が激しいことなどから、十分な空間解像度を持って観察することが困難であることが判明した。複数のPCP因子の欠損変異マウスを比較すると、PCP因子によって細胞形態と繊毛の配置に関して異なった表現型が見られることが判明した。 多繊毛細胞における細胞骨格の配置に関してのPCP因子の寄与を調べる為に、野生型、PCP変異マウスの多繊毛細胞における微小繊維、微小管、中間系フィラメントを固定サンプルによって空間配置の比較を行った。今後光学顕微鏡での観察に加えて、電子顕微鏡でのそれぞれの細胞骨格の配置を詳細に比較検討する予定である。
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