研究領域 | シリア・中心体系による生体情報フローの制御 |
研究課題/領域番号 |
15H01221
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
福井 一 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (80551506)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 一次繊毛 / ゼブラフィッシュ / カルシウムシグナル |
研究実績の概要 |
本研究では心臓発生時の一次繊毛による心外膜腔内流れ感知システムの詳細を明らかにすることを目的としてカルシウムシグナルに焦点を当てた研究を行っている。 まず、Gal4-UASシステムを活用して一次繊毛内におけるカルシウム変動の可視化を試みた。Gal4は酵母の転写因子であり、標的エンハンサー調節因子であるUASの下流遺伝子発現を調節する。繊毛局在タンパク質であるセロトニン受容体アイソフォーム6 (5HT6) と、緑色カルシウムセンサータンパク質であるG-GECOを融合したタンパク質を5xUAS下流で発現する個体を作製し、また全身で発現するbeta-actinプロモーター下でGal4を繋いだ個体を作製した。これらの個体の交配により、一次繊毛の屈曲が拍動依存的におこることを明らかにし、屈曲に伴った一次繊毛内カルシウム流入を観察した。 また一次繊毛内カルシウム流入の重要性を明らかにするため、アンチセンスオリゴを用いた繊毛内局在カルシウムチャネルの発現抑制実験を行った。その結果、pkd2like1の発現抑制により心外膜細胞の形成抑制が認められた。現在、心外膜腔内へ向かって突出する心外膜前駆細胞の一次繊毛がカルシウムシグナル伝達による流れ感知システムをもつ可能性を考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①ゼブラフィッシュを用い、一次繊毛内カルシウム変動を高解像度かつ高時間分解能を有して観察できる系を構築できた。現在、Lightsheet顕微鏡とイメージング解析ソフトウェアImarisを用いて繊毛特異的カルシウム変動の定量化を試みている。短時間の解析は可能であるが、長時間の観察では一次繊毛特異的なカルシウムセンサー発現が消光(ブリーチング)してしまう問題がおこっている。現在、異なるプロモーターを用いてカルシウムセンサー発現量を変更する等の条件を検討中である。 ②全身の一次繊毛を蛍光タンパク質で可視化できる個体の解析から、心臓発生期の心外膜前駆細胞から一次繊毛が突出することを新たに見出した。この繊毛が感知するカルシウムシグナルが心外膜細胞形成に重要である可能性について解析を継続している。 ③新たに学習院大学・西坂教授との共同研究を開始した。光ピンセットを用いた力学的な繊毛屈曲とゼブラフィッシュ一次繊毛内カルシウム変動の関係性を明らかにすべく検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、5xUAS下流で赤色カルシウムセンサータンパク質であるR-GECO1.2を発現する個体を作製中である。この個体を用いて細胞質内と一次繊毛内のカルシウム変動を同時に検討できると考えており、1細胞レベルで繊毛内カルシウムシグナル伝達の重要性について解析できる。また、繊毛内カルシウムチャネルとされるpkd2like1機能を阻害する変異体を得ている。現在pkd2like1ヘテロ接合体かつ心外膜細胞で緑色蛍光タンパク質を発現する個体を作製中であり、ホモ変異体における心外膜細胞形成への影響を検討する。またカルシウムセンサータンパク質を発現するpkd2like1変異体の作製も進行中であり、繊毛内カルシウムシグナルに対する影響を定量的に解析する。以上から、心臓形態形成過程における流れ感知依存性のカルシウムシグナルの重要性を明らかにする。
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