研究領域 | 植物細胞壁の情報処理システム |
研究課題/領域番号 |
15H01232
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 優 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60281101)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細胞壁 / ペクチン / ラムノガラクツロナンII / KDO |
研究実績の概要 |
ラムノガラクツロナンII(RG-II)は細胞壁ペクチンの部分領域であり、ホウ酸ジエステル結合で架橋され二量体を形成することでペクチンをネットワーク化させる。このRG-II領域の特異的構成糖である2-ケト-3-デオキシオクトン酸(KDO)について、シロイヌナズナにおける生合成経路の全酵素遺伝子を解明することを目的として研究を行った。植物では第1段階(初発基質D-アラビノース 5-リン酸の合成)および第3段階(初期反応生成物であるKDO 8-リン酸からKDOへの変換)の酵素遺伝子が同定されていない。このうち第1段階について、細菌でこの反応を触媒する酵素D-アラビノース-5-リン酸イソメラーゼ(API)を問合せ配列とした相同性検索により、アミノ酸レベルで30%同一なタンパク質をコードするシロイヌナズナ遺伝子SETH3を見出した。この遺伝子の大腸菌組換えタンパク質を作成し解析した結果、API活性が確認された。また発現解析の結果、成長点近傍や花器官で高発現することが明らかとなった。 また第3段階を触媒する酵素KDO-8-フォスファターゼ(KDO8Pase)について、既知のKDO合成関連遺伝子との遺伝子共発現解析を通じて候補遺伝子GPP2を特定し、組換えタンパク質のKDO8Pase活性を確認した。更に、GPP2がin vivoでもKDO 8-リン酸の代謝に機能していることを裏付ける証拠として、当該遺伝子の変異株では細胞内に反応基質KDO 8-リン酸が蓄積していることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な研究目標であるKDO生合成関連遺伝子を新規同定については、候補遺伝子を同定するとともに、それらが実際に当該遺伝子であることを支持する複数の証拠を得るに至っていることから、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は、すでに開始している変異株の表現型解析を継続し、現在得ている候補遺伝子が目的とするKDO合成関連遺伝子であることのさらなる証拠を得る。これら解析は細胞壁組成や代謝物の生化学的解析や、プロトプラストからの細胞壁再生過程の細胞生物学的解析など多方面にわたる可能性がある。そのため領域内での共同研究を積極的に実施することで研究の効率的な推進を図る。
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