公募研究
NOP1-Citrineをnop1変異体に導入し気室形成が回復した相補株と、NOP1のE3リガーゼ活性に必要なU-boxドメインを欠失した⊿UboxNOP1-Citrineを導入したnop1変異体と用いてNOP1と相互作用するタンパク質およびNOP1と相互作用しプロテアソームによる分解を受けるタンパク質候補を免疫沈降実験とLC-MSMSによるプロテオーム技術により解析した。候補となるタンパク質候補は数百にも及んだが、細胞内局在や機能ドメイン予測などの情報を併せて解析対象を28個にまで絞り込んだ。絞り込んだNOP1相互作用因子候補には、微小管や細胞骨格関連因子、セルロース合成酵素関連因子、膜交通関連因子、受容体キナーゼなどが含まれている。これらのNOP1相互作用因子候補をコードする遺伝子について、CRISPR/Cas9によるノックアウト株の作出を進めており、現在のところ2つの遺伝子について、気室形成に関連する表現形が見えている。そのうち、キネシン様カルモジュリン結合タンパク質ZWICHELの相同遺伝子CUFF.4329を破壊すると表面から気室孔が観察されず正常な気室形成が確認できない。CUFF.4329の破壊株は、気室の他にも仮根や葉状体の形態に異常が認められる(NOP1は野生株と変わらない)。また表層微小管とCESA複合体を連結するCELLULOSE SYNTHASE-INTERACTIVE1遺伝子の相同遺伝子CUFF.11924を破壊すると気室形成頻度が著しく減少し、形成された気室も異常な形態を示した。今後、これらの候補遺伝子の機能解析を進めるとともに、NOP1との相互作用について複数の手法を用いて確認し、ゼニゴケにおける離生細胞間隙形成にともなう気室形成機構を明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、基部陸上植物ゼニゴケの気室形成をモデルに、植物の離生細胞間隙形成の制御メカニズムを解明することを目的としている。ゼニゴケの離生細胞間隙形成を制御するE3リガーゼNOP1の相互作用因子候補を絞込み、更にその中から気室形成に関わる制御因子の同定にトライしてきた。プロテオミクス解析では、解析対象となる相互作用因子候補が多すぎること、実験毎のバラつきが大きいことが問題となった。しかしながら、CRISPR/Cas9による新しい変異体作出法を導入することにより、当初の想定よりもハイスループットな遺伝子機能解析系が確立された。この技術の導入により、離生細胞間隙形成の関連因子が複数見つかりつつある。
現在進めている、相互作用因子候補の機能解析については、CRISPR/Cas9系によるゲノム編集系による機能欠損変異体の作出と表現形解析を行っていく。機能欠損変異体について、気室形成に異常が確認され、気室形成に関連する機能が考えられる遺伝子については、発現組織やNOP1との相互作用について詳細な検証を行う。以上の情報を統合し、ゼニゴケにおける離生細胞間隙形成にともなう気室形成制御機構を明らかにする。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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