平成27年度は根の木部道管の二次細胞壁パターンに異状を示す変異体のスクリーニングを行い、多数の変異体を単離しました。主な表現型としては壁孔の密度や壁孔の大きさ、形状、方向性に異常が見られる変異体に着目しました。これらの変異体のバッククロスを進め、次世代シークエンサーを用いてゲノムリシークエンスを行う準備を進めました。さらに変異体とLandsberg系統とで交配を行い、そのF2集団を用いてラフマッピングを行う準備を進めました。同一の表現型を示す固体間で交配を行い、そのF1個体の表現型を指標にしてアレリズムテストを行い、各表現型の変異体で複数の原因遺伝子が存在する可能性を見出しました。また、これまでに逆遺伝学的な手法により同定した二次細胞壁パターンの新規制御因子の解析を進めました。その中で同定した新規の微小管付随タンパク質は複数の微小管付随領域と、細胞膜付随領域を有しており、これらの複数の領域により通常の微小管付随タンパク質よりも強固に微小管に結合していることが分かりました。また、細胞膜との相互作用により表層微小管に特異的に作用し、その重合を促進し、細胞膜上の活性型ROP GTPaseの局在に影響することが分かりました。計算機シミュレーションを行った結果、このタンパク質の微小管への作用と、活性型ROP GTPaseのシグナル経路とのバランスが後生木部道管の二次細胞壁パターンを決定していることが示唆されました。
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