公募研究
植物は、病原体由来の成分を直接的に認識する免疫システムに加えて、細胞壁を利用して病原体の侵入を間接的に感知するシステムを備えている。これまでに植物の細胞壁多糖類であるオリゴガラクツロン酸(OG; oligogalacturonic acid)が、膜受容体であるWAK(wall-associated kinase)を介して自身によって認識され、DAMP(damage- associated molecular pattern)として機能していることが見出されてきた。植物の細胞壁には、オリゴガラクツロン酸以外に多様な多糖類があり、それらもDAMPとして機能する可能性が考えられる。そこで、オリゴガラクツロン酸以外の細胞壁多糖類がDAMP活性を有するかを検証するための系の確立を行った。オリゴガラクツロン酸処理は活性酸素種(ROS)生成を誘導することが知られているため、活性酸素種(ROS)生成を計測する系の確立を試み、シロイヌナズナおよびゼニゴケを材料にROS生成を経時的に計測する系の確立に成功した。現在、この確立した系を用いて、細胞壁多糖類のROS生成誘導能の検証を進めている。また、DAMP応答に関わる制御因子の同定を目的として、シロイヌナズナをオリゴガラクツロン酸で処理し、リン酸化プロテオームの変動解析を行った。その結果、オリゴガラクツロン酸刺激によりリン酸化制御を受ける因子を多数同定することに成功した。
3: やや遅れている
当初の予想に反し、イネに対してDAMP活性を示した糖鎖Xのシロイヌナズナに対する活性を我々の解析システムでは検出することが出来なかった。そこで、シロイヌナズナを用いて糖鎖Xに対する応答を確実に解析する系の再確立が必要となった。それに伴い、予定していた一部のリン酸化プロテオーム解析およびそれ以降の解析に遅れを生じている。
シロイヌナズナの場合、調製した糖鎖Xを外部より与えると、何らかの理由(調製法・安定性・受容体へのアクセスなど)で上手く応答しないことが考えられた。そこで、自身の細胞壁から糖鎖Xを代謝酵素活性を利用して任意に生じさせる形質転換シロイヌナズナの作出を試みた。予備実験により、得られた形質転換体を用いることで、糖鎖Xに対する応答を解析できることを確認した。現在、この形質転換体を用いたリン酸化プロテオーム解析を行う準備を進めている。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
PLoS Genet
巻: 12(2):e1005856 ページ: -
10.1371/journal.pgen.1005856
Front Plant Sci
巻: 6:1098 ページ: -
10.3389/fpls.2015.01098