研究領域 | ウイルス感染現象における宿主細胞コンピテンシーの分子基盤 |
研究課題/領域番号 |
15H01253
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野田 岳志 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (00422410)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス |
研究実績の概要 |
インフルエンザウイルスのM1タンパク質は、エンベロープ直下にmatrix layerを形成することでウイルス粒子構造を安定化する。これまでに、M1タンパク質は中性pH域(液中)でマルチマー化する性質を持つことが明らかにされている。中性pH域におけるM1タンパク質のマルチマー化は、エンベロープ膜直下でmatrix layerを形成するための性質であり、ウイルス粒子形成に必須のプロセスである。また、酸性pH域(液中)においては、M1タンパク質は解離し、dimer化することも報告されている。酸性pH域におけるM1タンパク質の解離は、ウイルス増殖環の初期のプロセス(酸性エンドソームにおける脱殻)に相当する。すなわち、M1タンパク質のマルチマー化・脱マルチマー化は、ウイルス増殖において重要な役割を担うと考えられる。しかし、M1タンパク質は膜結合タンパク質であり、脂質膜上におけるM1タンパク質のマルチマー化・脱マルチマー化の分子動態の詳細はほとんど明らかにされていない。本研究では、主として高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を用いて、脂質膜上におけるM1タンパク質のマルチマー化および脱マルチマー化のプロセスをリアルタイムで視覚的に解析する。M1タンパク質のマルチマー化・脱マルチマー化の分子動態を明らかにすることで、ウイルスアセンブリー機構の解明を目指す。本年度はこれまでに、大腸菌発現系を用いた精製M1タンパク質(A/WSN/33 (H1N1)由来)の調製系と、リポソームから調製した脂質二重膜(モデル細胞膜)を2次元的にマイカ上(高速AFMの観察基盤:雲母板)に形成させる実験系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は精製M1蛋白質の調整ならびに原子間力顕微鏡基板上における脂質二重膜の作製など、実験系を確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、脂質膜へのM1タンパク質の吸着および脂質膜上でのM1タンパク質の動態(マルチマー化)をリアルタイムでイメージング解析する。
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