研究実績の概要 |
単純ヘルペスウイルス(HSV)のヌクレオカプシドは核内膜をエンベロープとして被ることによって核内膜から核内外膜腔に一旦出芽し(primary envelopment)、その後、エンベロープと核外膜が融合することで、ヌクレオカプシドが細胞質へ放出される(de-envelopment)。近年、小胞媒介性核外輸送を制御するウイルス因子が次々と同定されつつある一方で、本輸送を制御する宿主細胞因子およびその作用機序はほんど明らかになっていない。本研究の目的は、HSVの核膜通過を制御するウイルス因子と結合する宿主因子を網羅的に同定することで、小胞媒介性核外輸送の詳細な分子機構を明らかにすることである。本年度、我々はHSVの小胞媒介性核外輸送を制御するウイルス糖タンパク質gBと相互作用する宿主因子としてCD98hcおよびCD98hcとヘテロダイマーを形成するβ1 integrin(Y. Hirohata et. al, J Virol. 89:7799-7812, 2015)を、UL47と相互作用する宿主因子としてp32(Z. Liu et. al, J Virol. 89:8982-8998, 2015; Spot-Lightとして掲載号の巻頭で紹介)を同定した。これらの宿主因子は、HSVの核膜通過を制御する他の様々なウイルス因子とも相互作用しており、HSV感染にともなって核膜へと集積した。またいずれのノックダウンによっても、HSV核膜通過におけるde-envelopmentの阻害とウイルス増殖の低下が認められた。今回、HSVの小胞媒介性核外輸送におけるde-envelopmentを制御する新規宿主細胞因子を複数同定することに成功した。
|