研究領域 | ウイルス感染現象における宿主細胞コンピテンシーの分子基盤 |
研究課題/領域番号 |
15H01256
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
片平 正人 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (70211844)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | APOBEC3G / HIV / 脱アミノ化 / リアルタイムモニタリング / NMR / スライディング |
研究実績の概要 |
ヒトのAPOBEC3Gタンパク質(A3G)は、HIVのプラス鎖ゲノムRNAから中間体として生成されるマイナス鎖DNAに作用し、シトシン塩基を脱アミノ化してウラシル塩基に変換する。これによってHIVの遺伝情報は破壊され、A3Gは抗HIV活性を発揮する。我々はNMRシグナルを用いる事で、A3Gの塩基変換反応をリアルタイムでモニタリングする事に成功してきた。 我々はこれまでに、CCC配列が5’端近くに位置するほど脱アミノ化反応が早く進行する事を見出してきた(3-5' polarity)。そしてこの現象は、A3GがDNA上をスライディングしながら脱アミノ化反応を生じるとする事で説明できる事を示した。スライディングを支える相互作用を同定する為に、二つのCCC配列における酵素反応速度及び3-5' polarityが、イオン強度の変化によってどのような影響を受けるのかを、リアルタイムNMR法によって調べた。イオン強度を高い値から下げていった際、酵素反応速度はベル型の挙動を示したが、3'-5' polarityは単調増加を示した。これは低イオン強度においてはDNAとA3Gの間の静電相互作用が強まる為、A3GがDNAから外れにくくなり、スイライディングが有効に持続する為だと解釈される。酵素反応速度及び3'-5' polarityが、pHの変化によってどのような影響を受けるのかを調べた結果も、この考えを支持した。以上よりスライディングを支えているのは静電相互作用であると結論された。 A3Gがエピジェネティックマーカーである5メチルシトシンを脱アミノ化できる事が、リアルタイムNMR法によって初めて示された。またさらに酸化が進んだ5ヒドロキシメチルシトシンは脱アミノ化されない事も示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NMRシグナルを用いた酵素反応のリアルタイムモニタリング法を駆使する事で、APOBEC3Gタンパク質がDNA上をスライディングする際に効く相互作用を同定する事に成功した。反応速度および3-5' polarityに関して、本法で塩濃度依存性及びpH依存性を調べる事で、相互作用に関して確固たる結論が得られた事は意義深い。APOBEC3Gのエピジェネティクスへの関与を示唆する結果も得る事ができた。また蛋白質間相互作用の解析に関しては、試料の調製が順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
蛋白質間相互作用を解析するための試料の調製が順調に進んでいるので、これを用いて相互作用様式の決定と当該相互作用をブロックする阻害剤の探索を目指す。
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