連携研究者の川口敦史博士らがインフルエンザウイルスから直接精製したRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)をモリブデン酸アンモニウムを用いて染色し、エネルギーフィルターを備えた透過型電子顕微鏡を用いて画像取得を行った。電子顕微鏡において近原子分解能に到達した最新の電子直接検出器によるDose fractionationモード撮影、続くmotion correctionにより、非常に高分解能の画像取得に成功した。これらを用いて単粒子解析法により2Dクラス画像を計算した。ここに2Dハイブリッド解析を適応し、(1)RdRpのみ(2)RdRp + Capped RNA(3)RdRp + Capped RNA + NTP(4)RdRp + Capped RNA + NTP-UTPの4種類についてRdRpのコンフォメーションを調べた。連携研究者の松本淳博士は自ら開発した2Dハイブリッド法にさらにネガティブ染色モデルをより実際に近い形でシミュレートするという工夫を加えることにより、多彩なコンフォメーションをとるRdRpの解析を可能にした。その結果明らかになったのは、PB2のキャップ結合ドメインのフレキシビルであることと、そのコンフォメーション変化の経路である。結晶構造解析をもとにCusackたちが提唱したモデルに近いが少し異なるものだった。4種類のリボシヌクレオシド三リン酸を加えたときのみ様々なコンフォメーションが混合した状態になり、他の条件では、メジャーなコンフォメーションがそれぞれ一つずつ観察された。
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