研究領域 | ウイルス感染現象における宿主細胞コンピテンシーの分子基盤 |
研究課題/領域番号 |
15H01262
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
川崎 拓実 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (60584414)
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研究期間 (年度) |
2015-06-29 – 2017-03-31
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キーワード | イノシトールリン脂質 / PIKfyve / ウイルス / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
ウイルスが生体内に侵入することにより細胞に感染すると、初期の生体防御応答として、細胞がウイルス特異的な構造を認識し、活性化することで、1型インターフェロンなどのサイトカインを産生する一連の応答を行う。自然免疫応答を介したウイルスに対する防御機構は、様々な分子が協調的に働くことにより制御されている。分子以外にも、さまざまな生体内物質が感染防御に役立っていることが報告されており、その中でも脂質はシグナル因子や反応の場を提供している。特にイノシトールリン脂質は、生体において様々な機能的役割を担う脂質グループであり、脂質鎖の頭の部分あたるイノシトール環のリン酸化のパターンにより役割を分担している。細胞内に占めるイノシトールリン脂質の割合は、リン酸化酵素、脱リン酸化酵素によりバランスが制御されており、バランスの均衡が崩れることにより、自然免疫応答を含む生体防御も破綻することが考えられる。実際に、私たちはイノシトールリン脂質の一種であるホスファチジルイノシトール5リン酸が、ウイルス感染に対する自然免疫応答のシグナル制御に関与することを明らかにしてきた。 本研究ではこれまでの知見をもとにさらに発展させ、ウイルス感染防御におけるイノシトールリン脂質の役割の解明を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではPIKfyveのノックアウトを用いた実験においては、十分な数のマウスが得られたため、in vitroでの感染実験等を行うことができた。一方、cas/crisprシステムを用いていくつかのホスファチジルイノシトール代謝酵素のノックアウト細胞を作製することにより、ウイルス感染におけるイノシトールリン脂質の役割を明らかにすることを目的としているが、ノックアウト細胞の作製が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
個体感染モデルを用いる。多くのウイルスは気道から侵入し、粘膜さらに肺に感染を広げることにより、感染を拡大している。この肺感染モデルでは、肺に存在する肺胞マクロファージがウイルス排除に重要な役割を果たしている。そこで、NDV, EMCV, IAVによる感染実験を行い、感染後の生存率、肺胞内ウイルス価、サイトカインの産生を調べる。また、感染後の肺胞マクロファージをCD11c/SiglecF抗体を用いてFACSで単離し、ウイルスに対しての応答をリアルタイムPCRまたは、ジーンチップで網羅的に調べる。 また変異細胞は、継続して作製を試み、フレームシフト変異を持つ細胞が得られたのち、IAV、NDV、EMCV、HSV1ウイルスに感染させ、その後のウイルス価を、リアルタイムPCRを用いて定量する。その他、センダイウイルス(SeV)、水疱性口炎ウイルス(VSV)、日本脳炎ウイルス(JEV)等の感染実験を検討している。また、ウイルス感染後の自然免疫応答についても、1型インターフェロン、IL6等のサイトカインの産生量を測定することにより、どのような影響があるか検討する。
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