研究領域 | ウイルス感染現象における宿主細胞コンピテンシーの分子基盤 |
研究課題/領域番号 |
15H01265
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小柴 琢己 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70403970)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | RNAウイルス / ミトコンドリア / 自然免疫 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
ミトコンドリアは主としてアデノシン三リン酸(ATP)産生の場として知られているが、その代謝における機能以外にもさまざまな細胞応答ともリンクし、各種シグナル伝達過程における中継地点としての役割をもつ。例えばアポトーシス時には、細胞外からの刺激が受容体を介して細胞内の各種シグナル伝達因子に伝わり、その情報がミトコンドリアに集約する、まさに情報伝達のハブとしての機能を担っている。 また、RNAウイルスに対する細胞内自然免疫においても、宿主細胞内に移行したウイルス由来の核酸は、細胞内RNAセンサー分子 (RIG-I/MDA-5) により感染初期に認識され、その情報がミトコンドリア外膜上に局在する膜蛋白質MAVSへと伝達される。これら一連のシグナル伝達過程は、その後のミトコンドリア下流の各転写因子やリン酸化酵素の活性化、最終的に転写産物の発現へと導かれる。このように、ミトコンドリアは細胞内シグナルソームの中継地点として細胞の運命をコントロールしている重要なオルガネラである。 そこで該当年度は、感染細胞内でのミトコンドリアの役割を明らかにすることを目指した。特に、ウイルス感染による細胞負荷のミトコンドリアへの影響を、ウイルス産生蛋白質と宿主・ミトコンドリアタンパク質の両者の挙動を調べ、細胞生物学的な実験を中心として興味深い実験知見を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、その当初目的である抗RNAウイルス自然免疫応答時におけるミトコンドリアの役割を明らかにするものであり、現在までにおいて、予備的な実験結果から興味深い知見を得ることができた。今後の継続的な実験の遂行により、次年度の明確な研究方針が立てられているために順調な推移と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として以下のような課題を予定している。
1. ウイルス感染時における細胞内のミトコンドリア依存的なエネルギー代謝をATPプローブを用いて、細胞レベルで調べる。
2. 酸化的リン酸化活性と抗ウイルス免疫応答との関連性を、ミトコンドリア阻害剤を用いた実験により明らかにする。
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