ノックアウトマウスを用いたこれまでの研究でわれわれは、気道上皮に発現している宿主のプロテアーゼTMPRSS2が、A型インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)を開裂する必須酵素であることを証明してきた。本研究では、さらに (1)A型インフルエンザウイルスのH3亜型HAタンパクの8番目のアミノ酸には、N型糖鎖(8位N型糖鎖)が付加されている(他の亜型では、この糖鎖はない)。この糖鎖によってHAタンパク開裂(ウイルス活性化)のプロテアーゼ特異性が制御されていることを明らかにした。(2)H3亜型の8位N型糖鎖は、ヒト、鳥に由来するウイルス株では保存されているが、ブタに由来するウイルス株では、保存性が低いことを明らかにした。(3)他の亜型ウイルスでも、糖鎖の位置は異なるが、立体構造上、ストークに位置する糖鎖が、H3亜型と同様にプロテアーゼ特異性に関係していることを明らかにした。
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