• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

ストレス性精神疾患における扁桃体外側核の病態解明

公募研究

研究領域マイクロエンドフェノタイプによる精神病態学の創出
研究課題/領域番号 15H01279
研究機関富山大学

研究代表者

森 寿  富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (00239617)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードグルココルチコイド受容体 / 扁桃体 / 恐怖条件付け / 情動学習 / コンディショナルノックアウト
研究実績の概要

気分障害や不安障害等のストレスが関わる精神疾患の生涯有病率は、我が国では20%近くに達しており、国民の健康福祉や経済的観点から克服すべき課題のひとつである。ストレス性精神疾患の原因のひとつとして、扁桃体が担う情動制御の異常が示唆されている。
ストレスが情動学習に与える影響を明らかにするために、我々は、ストレスホルモンのひとつであるグルココルチコイドの受容体(GR)遺伝子を扁桃体外側核(LA)選択的に欠損させたマウス (LAGRKO) 系統を作製し、恐怖条件付け連合学習を用いた情動学習課題を課して行動学的に解析した。その結果、1)LAGRKOマウスは、音と電気ショックの連合回数が少ない場合には、記憶学習障害を示さない一方、連合回数を6回に増やすと障害を示した。また、この障害は、アデノ随伴ウィルスベクターで、LAに特異的にGRを発現することで回復した。従って、強い恐怖記憶形成にLAのGRが関わる事を明らかにした。さらに、2)この学習障害と並行してLAで記憶過程に重要な転写因子CREBの活性化(リン酸化)の持続時間が減少していることを見いだした。3)この連合学習にストレスが与える影響を明らかにするために、恐怖条件付け前に短時間の拘束ストレスを付加して解析を行った。その結果、拘束ストレス1時間後ではコントロールマウスで低下した恐怖記憶が、LAGRKOマウスでは、低下しないことが明らかになった。これらの結果から、LAGRは、ストレスが関わる恐怖学習過程で異なるいくつかの役割を担っていることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定した扁桃体外側核選択的にグルココルチコイド受容体を欠損させたLAGRKOマウス系統の作製に成功し、恐怖条件付け記憶の障害を見いだし、また、AAVベクターの構築による機能回復試験にも成功した。このマウスを用いて行動学習を解析した結果、扁桃体グルココルチコイド受容体は、ストレスが関わる恐怖学習過程で異なるいくつかの役割を担っていることを初めて明らかにし、当初予定していた解析が概ね順調に進展したため。

今後の研究の推進方策

扁桃体外側核(LA)選択的なGR遺伝子欠損マウスを用いて、ストレス性精神疾患に対する抵抗性を示すモデル動物としての妥当性を評価する。さらに、扁桃体外側核選択的なGR遺伝子欠損および対照マウスの扁桃体スライスを用いてマイクロダイセクション法により扁桃体外側核を切り出し、mRNAを抽出してトランスクリプトーム解析を実施し、LAでのGRの標的遺伝子群を明らかにする。見出した遺伝子産物が、ストレス性精神疾患のあらたなマーカー分子や薬物標的となりうるか評価を行う。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] Ezrath Nashim-Herzog Memorial Hospital(イスラエル)

    • 国名
      イスラエル
    • 外国機関名
      Ezrath Nashim-Herzog Memorial Hospital
  • [国際共同研究] Columbia University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Columbia University
  • [雑誌論文] In vivo imaging of CREB phosphorylation in awake-mouse brain.2015

    • 著者名/発表者名
      Ishimoto, T., Mano, H., Mori, H.
    • 雑誌名

      Sci. Rep.

      巻: 5 ページ: 9757

    • DOI

      10.1038/srep09757

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Clinical and electrophysiological effects of D-serine in a schizophrenic patient positive for anti N-methyl-D-aspartate receptor antibodies.2015

    • 著者名/発表者名
      Heresco-Levy, U., Durrant, A. R., Ermilov, M., Javitt, D. C., Miya, K., Mori, H.
    • 雑誌名

      Biological Psychiatry

      巻: 77 ページ: e27-e29

    • DOI

      10.1016/j.biopsych.2014.08.023.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] D-セリンとセリンラセマーゼの生体機能2015

    • 著者名/発表者名
      森寿, 井上蘭
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会 ワークショップ
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2015-12-03 – 2015-12-03
    • 招待講演
  • [学会発表] CREBリン酸化イメージング法の開発と脳機能解析への応用2015

    • 著者名/発表者名
      森寿
    • 学会等名
      第27回日本脳循環代謝学会総会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      2015-10-31 – 2015-10-31
    • 招待講演
  • [学会発表] 発光蛋白質を用いた生体脳内CREBリン酸化の可視化2015

    • 著者名/発表者名
      石本哲也, 森寿
    • 学会等名
      第24回日本バイオイメージング学会学術集会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2015-09-27 – 2015-09-27
  • [学会発表] ルシフェラーゼを用いたマウス脳内CREBリン酸化のイメージング2015

    • 著者名/発表者名
      石本哲也, 真野寛生, 森寿
    • 学会等名
      第33回日本生化学会北陸支部大会
    • 発表場所
      富山
    • 年月日
      2015-05-23 – 2015-05-23
  • [図書] 情動学習の分子機構、情動の仕組みとその異常(山脇成人、西条寿夫編集)情動学シリーズ22015

    • 著者名/発表者名
      井上蘭、森寿
    • 総ページ数
      16
    • 出版者
      朝倉書店

URL: 

公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi