高速3次元で神経細胞およびシナプスの活動を捉えることのできる2光子イメージング法の改良を行った。これまでのピエゾを用いた焦点走査に代えて、超音波変調型GRINレンズを用いることで、さらに高速(>100kHz)な焦点走査を可能にした。これによって、縦方向に100umに伸びた点拡がり関数をもつ2光子励起を実現し、幅200um、高さ200um、深さ100umの体積内に存在する、神経細胞およびシナプスの活動を捉えることが可能となった。一方、広範囲における神経活動観察のために、低倍の対物レンズを導入し、1mm四方の範囲を観察可能にした。さらに、高速走査に伴って低下するシグナル強度を補償するために、高輝度かつ高感度な新規カルシウムプローブ分子を用いることで、体積内における単一スパインの反応を高いS/N比で観察することが可能となった。これにより、覚醒状態におけるマウス体性感覚野第2/3層錐体細胞の樹状突起において、自発活動および感覚刺激に対する応答が、近傍に位置するスパインで同期して入力することを明らかにした。また、少数のスパインへの入力によって、樹状突起において顕著にカルシウム上昇が起こる例が観察されたが、これらは樹状突起局所における情報処理過程を示していると考えられる。このように、開発した顕微鏡およびカルシウムプローブを用いることで、疾患モデル動物の神経・シナプス活動を高速かつ大規模に観察しその病態解明に貢献できることが期待される。
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