研究領域 | マイクロエンドフェノタイプによる精神病態学の創出 |
研究課題/領域番号 |
15H01284
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山田 清文 名古屋大学, 医学部附属病院, 教授 (30303639)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 統合失調症 / 主要組織適合遺伝子複合体 / アストロサイト / 周産期ウイルス感染モデル / 神経発達障害 |
研究実績の概要 |
主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子 (MHCI) は脳神経系では神経発達やシナプス可塑性に重要な役割を果たしている。さらに、神経発達障害との関連性も報告されており、MHCIは統合失調症の遺伝的要因あるいは環境要因に基づく神経発達障害を仲介する分子であると提唱されている。しかし、MHCIの発現変化に伴う脳神経発達あるいは高次脳機能発達の変化についてはほとんど解っていない。一方、我々は統合失調症の環境要因を考慮した周産期擬似ウイルス感染モデル(polyICモデル)を開発し、本モデルにおける神経発達障害と統合失調症様の行動異常を明らかにしているが、polyICモデルマウスの海馬ではMHCI/H-2D, H-2K の遺伝子発現が増加し、培養アストロサイトをpolyICで刺激するとMHCI/H-2D,H-2K遺伝子が誘導され、培養液中の可溶性MHCI/H-2D (sMHCI/H-2D)が増加することを確認している。平成27年度は、AAVベクターを用いてGFAPプロモーター制御下に全長MHCI/H-2Dあるいは分泌型sMHCI/H-2Dをマウス前頭葉に過剰発現させ、3週間後に系統的な行動解析を実施した。また、MHCI発現細胞を免疫染色により同定するとともに、神経病理および神経化学的解析も行った。MHCI/H-2Dはアストロサイトに発現しており、MHCI過剰発現動物マウスでは、社会性行動、物体認知記憶およびプレパルス抑制に障害があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.幼若期以降のマウスにおいては、AAVベクターを用いてGFAPプロモーター制御下、アストロサイト特異的にMHCI/H-2Dを発現させるin vivoシステムを構築することができた。 2.MHCI/H-2D過剰発現マウスの行動異常を複数の行動試験で確認できた。 3.MHCI/H-2D過剰発現マウスの前頭葉皮質領域のAMPA受容体の膜発現に変化を認めた。 4.新生仔期(生後2日目)にも同じAAVベクターを用いてMHCIを過剰発現させることは可能であるが、MHCI発現細胞は前頭葉皮質以外にも拡散していた。
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今後の研究の推進方策 |
1.MHCI過剰発現動物マウスの神経細胞とグリア細胞の微細構造変化について、免疫染色、ゴルジ染色等を用いて調べる。 2.マウス脳から単離したアストロサイトに全長MHCI/H-2Dおよび可溶性sMHCI/H-2Dを発現させ、アストロサイトの培養上清を初代培養神経細胞に添加し、神経スパインの変化等を解析する。 3.さらに、神経機能に関連する分子のmRNA量、AMPA受容体トラフィッキングとリン酸化等を調べる。 4.MHCI過剰発現マウスから脳切片を作製し、神経細胞の機能を電気生理学的手法を用いて解析する(共同研究を予定)。
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